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なるほど!食の知識

コーヒーは身体にいい?悪い?ポリフェノールの健康効果とは(2/2)

掲載号 vol.9

記事内容

読了時間:9分

コーヒーにまつわる 疑問Q&A

コーヒーがカラダに悪いと言われてきた理由は何?
日本に普及し始めたのが戦後と歴史の浅い飲み物であること、80年代に発表されたコレステロール値を上げるという学説(本文参照)がなかなか払拭されないこと、色が黒いということなどが原因だと思われます。カフェインを含んでいるので、刺激物に敏感な子どもや妊婦さんが飲まない方がいいと言われることも要因かもしれません。
コーヒーのカフェインはカラダに悪い?
カフェインのおもな作用のひとつに覚醒・興奮作用があります。カフェインには依存性があると言われますが、日常生活で食品から摂るレベルでは問題ありません。一度に大量(約300㎖以上)に飲むことを避け、時間をあけて飲みましょう。
妊婦子どもは本当に飲んじゃダメなの?
肝臓の機能が未熟な胎児は、カフェインをうまく排泄できません。また、カフェインは胎児の発育に影響があるという報告もあるので、避けた方がよいと言われています。覚醒・興奮作用があるので、身体も小さく、刺激物に敏感な子どもにも避けた方がベター。
コーヒーを飲むと成人病に効果があるって本当?
コーヒーに含まれるポリフェノール(クロロゲン酸)に、血糖値を調整する働きや、余分なコレステロールを代謝するHDLを増やす働きがある可能性が。また、カフェインがインスリンの分泌を促進させる働きがある可能性などが研究されています。コーヒーを飲むだけで予防ができるわけではありませんが、悪い影響はないようです。
コーヒーががんの発生率を下げるって本当?
クロロゲン酸(前記参照)には、赤ワイン、緑茶、ココアに含まれるポリフェノール同様、LDLコレステロールの酸化を抑える効果があります。“がんの発生を抑える”とは言えませんが、活性酸素が遺伝子を傷つけることがガンの発生の要因なので、活性酸素を抑える役目を果たすポリフェノールを摂取することで効果があるのではないかと言われているようです。
どんなコーヒーを飲むといいの?
きちんとフィルターを使って抽出したコーヒーであれば、どんなものでも大丈夫。カフェインが気になる方は、カフェイン抜きのコーヒーでもポリフェノールの含有量は同じです。またインスタントコーヒーも、フィルタードコーヒーをフリーズドライしたものなので同様の効果が得られます。ミルクや砂糖を入れるとカロリーの過剰摂取になるので、ブラックで飲むほうがおすすめです。
どのくらい飲むといいの?
1日に1000〜1500㎎のポリフェール摂取が理想的と言われています。これをコーヒーに換算すると1日約5杯(1杯150㎖)。緑茶だと平均的な濃さのもので約10杯となります。一度に大量に飲むのではなく、カフェインの影響も考えて、3時間ほど時間をあけて飲むのがおすすめ。朝食後、10時の休憩、昼食後、3時の休憩、夕食後にコーヒーを楽しむのは理にかなっているということですね。
ダイエットにもいいって本当?
コーヒーには脂質の吸収を抑える効果があります。食後にコーヒーを飲む習慣はそのために生まれたものかもしれません。また、カフェインには血流促進作用や、脂肪分解酵素リパーゼを活性化する作用があり、脂肪の燃焼を助けるとも言われています。けれど、コーヒーを飲んでいるからと安心して脂質を多く摂ったり、ミルクたっぷりのコーヒーを飲むのは逆効果なので要注意。やはりダイエットには身体を動かすことが大切。コーヒーを楽しんだ後に、適度な運動がベストです。

コーヒーの香りでリラックス

香りには脳の活動を変える力があるといいます。コーヒーの香りは800種類以上の成分が混ざって醸し出される複雑な香りです。豆の種類によって、味だけでなくその香りは千差万別。皆さんはコーヒーの香りを嗅ぎ分けることはできますか?

コーヒーの香りを嗅いだときの脳波を測った面白い実験があります。「グァテマラ」や「ブルーマウンテン」の香りを嗅ぐと、リラックスしたときに出るα波が多く出現します。一方で「ブラジルサントス」と「マンデリン」ではα波が少なく、集中力の実験で見られるP300が早く出現しました。P300とは脳の情報処理速度を測る脳波で、早く出現するほど集中していることがわかります。このことから「ブラジルサントス」や「マンデリン」の香りは集中力を高め、前述の2種類は脳の活動を円滑にして心をリラックスさせることが分かります。

自分では気づかないうちに、脳は「リラックスする香り」と「頭の回転を速くしてくれる香り」をきちっと嗅ぎ分けて反応していたのです。

ほっと一息つきたい時、集中したい時で、コーヒーの種類を変えてみてはいかがでしょうか。ただし、どちらのタイプも、嗅ぐだけでなく飲んでしまうとカフェインの興奮作用の方が大きくなってしまいます。リラックスのためには、豆を挽いたり、淹れたての香りを嗅いだり、飲む場合は、カフェインの効果がはっきり現れるまでの30分間をゆっくりと楽しむのがよさそうです。

お話しを聞いた先生
古賀良彦教授 杏林大学医学部精神神経科学教室教授

こが よしひこ 1971年、慶應義塾大学医学部卒業。1976年、杏林大学医学部精神神経科学教室に入室、現在に至る。日本催眠学会理事長、日本ブレインヘルス協会理事長、日本薬物脳波学会副理事長、日本臨床神経生理学会理事などを務める


この先生に聞きました!

近藤和雄教授

近藤和雄教授

こんどう かずお

お茶の水女子大学大学 大学院教授

1979年、東京慈恵会医科大学卒業後、メルボルンのベイカー医学研究所へ留学。防衛医科大学校病院講師、国立健康・栄養研究所臨床栄養部室長を経て、現在、お茶の水女子大学大学院生活環境教育研究センター長。日本動脈硬化学会評議員。赤ワインに含まれるポリフェノールの動脈硬化予防の効果をいち早く実証し、世界的な医学雑誌『Lancet』で報告

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