震災遺児に進学の夢を。東日本大震災で親を亡くした子どもの進学を支援する、『みちのく未来基金』は、カゴメ、カルビー、ロート製薬の三社が発起企業として、共同で設立しました。2011年に始まったこの復興支援への想いを代表取締役会長兼CEO・山田邦雄がお伝えします。
子どもたちが、夢に向かって歩めるように。
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子どもたちが、夢に向かって歩めるように。
何かをしたい。親を亡くした子どもの力になりたい!
「震災遺児に進学の夢を」。今回は、そんな想いを持って設立した、『みちのく未来基金』のお話をしたいと思います。この基金は、東日本大震災で親を亡くした子どもたちの、高校卒業後の学業支援を目的に設立しました。震災の年に生まれた子どもも対象で、20年以上続けていく長期の活動になります。
あの震災の直後、まだ社会が混乱している中で、これは私たちも何かしなければならない! と強く感じました。支援の方法はさまざまですが、親を亡くした子どもたちの心情を思うと、なんとか力になりたい、それも、国や他の組織がやってくれない支援を自分たちの手でやりたい! と強く思ったのです。震災後2週間ほどたった頃、社内でその活動に加わりたい人を募ると、なんと50人ほどが手を挙げてくれました。その中から選ばれた6人のメンバーで、ロートの【復興支援室】が立ち上がったのです。また、その話を親しい企業の友人に伝えたところ、早速それぞれが「会社を挙げてやろう!」ということになり、カゴメ株式会社、カルビー株式会社、そしてわが社の三社による共同プロジェクトがスタートしました。
『みちのく未来基金』設立時の、発起三企業の会長による合同記者会見。
左からカゴメ(株)喜岡浩二氏、ロート製薬(株)山田邦雄、カルビー(株)松本晃氏
進学をあきらめず、夢へと続く道を歩んで行けるように。
被災地を訪ね、状況を聞いていくと、子どもたちの当面の生活や高校までの学業支援は結構手厚くあることがわかりました。しかしそれ以降は、もう"大人"ということで格段の支援がなく、進学をあきらめようとしている高校生が多くいることもわかったのです。そうか、じゃあ高校卒業後の学費を支給しよう、それぞれが描いていた夢の実現を手伝おう! ということになったのです。該当者数や必要な金額もわからないうちの決定でしたが、少なくとも発起三社は最後まで責任を持って支援し続けようという覚悟をしたのです。
被災地がまだまだ混乱する中での情報収集、やったこともない基金設立の手続き、高校を訪問しての先生方との面談、一般への告知……。メンバーの奔走によって、翌年春の卒業生の中に該当者が100名前後あり、多くの生徒が大学や専門学校への進学を望んでいることが実際に見えてきたのです。亡くなったお父さんやお母さんとの約束を果たしたい、という子どもも多くいました。
たくましく成長していく子どもたちこそが、復興の要になる!
『みちのく未来基金』がユニークなのは、一律一定の補助ではなく、各自の進路に応じて実費(上限は年間300万円)が全額支給されるところです。このような支援は公的機関では難しく、まさに民間だからできることだと思います。また一方では国にも働きかけ、普通はなかなか下りない【公益財団法人】の認可も最速で取ることができ、寄附者の方の負担軽減につながりました。
現在基金の運営メンバーは、設立三社にエバラ食品工業株式会社からの出向者が加わり、仙台に拠点を置いて活動しています。基金の本当の素晴らしさは、単なる金銭的な支援にとどまらず、困難な状況にある子どもたち一人ひとりと向き合い、相談に乗ったり励ましたりしながら、進学という大きな人生の岐路を支えているところです。そして、この基金の奨学生である“みちのく生”たちがつながり、交流することで、人には見せられない本当の悲しみや痛みを分かち合える仲間になっていることも、大きな存在意義だと思います。
基金設立後、みちのく生は4期生まで進学を果たしています。すでに社会で活躍している人もいます。また、支援の輪が広がり、多くの企業・団体や個人の方から継続的な寄附をいただけるようになりました。なんと、それは震災後4年を経て年々増加しているのです! これは本当に想定外でした。当初、次第に寄附が集まりにくくなるだろう……と漠然と思っていました。しかし、逆境にめげず、自分の道を進もうとしている子どもたちに、想いを寄せてくれる人がこれだけいるとは! 日本という国はまだまだ捨てたものではありませんね。
この国の将来は、震災から立ち上がり、夢に向かってたくましく成長していく子どもたちこそが中心となり担っていってくれることは間違いないと思います。支援はこれからも続きます。もし興味を持っていただけたなら、ぜひ『みちのく未来基金』のサポーターに加わってください。
- みちのく生同士、また、みちのく生とサポーター(寄附者)が親睦を深める、交流の場も設けられます。仲間がいるという喜びも、みちのく生の支えに。
- 基金にエントリーした子どもたちとの面談。「基金生には徹底して温かく接する。ただし、決して甘やかすことをしない」が、活動のひとつの指針に
『みちのく未来基金』について
東日本大震災で、両親またはいずれかの親を亡くした子どもたちが、高校卒業後に大学・短大・専門学校へ進学するための基金です。入学金・授業料の全額(年間上限300万円)を返済不要で基金が給付します。震災当時お腹の中にいた子どもが卒業するまで、活動を続けます。給付金の申請方法や、寄附・支援について『みちのく未来基金』のホームページで案内しています。
http://michinoku-mirai.org問い合わせ ☎022-343-9996