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なるほど!食の知識

濃密な味を生む!自然の力で育むカボチャ畑を訪ねて(1/2)

掲載号 WEB限定

vol.9

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[今回の野菜ピーマン] カボチャ(愛知県 南知多町)

いよいよ収穫の秋、ハロウィンで人気者の「カボチャ」は今が旬。免疫力を高めるカロテンが豊富で昔から「冬至に食べると風邪をひかない」といわれている緑黄色野菜です。今回はその秋の味覚をこだわりの農法で育てる愛知県の南知多町(みなみちたちょう)の農事組合法人「光輪(こうりん)」を訪れました。

記事内容

読了時間:5分

濃密な味を生む!自然の力で育むカボチャ畑を訪ねて

岩だらけの土地からはじまった農業

愛知県の南に位置する知多半島の南知多町。光輪の畑は海の見渡せる風が心地いい場所にあります。一面に畑が広がるこの場所は、かつて、今では想像できないような岩だらけの土地でした。23年前、南知多町に20haの農地を作るため町へ呼ばれたのが、今回お話を伺う農事組合法人「光輪」初代理事長の熊崎さんです。農地を開拓する場所は、地域の畜産の排泄物処理場でした。ここを農地に使うには排泄物の処理も受け入れることが条件。そこでまず熊崎さんが行ったのが微生物を使った排泄物の発酵でした。それが畑の肥やしになるといいます。

岩が風化して、1cmの土になるには約100年かかるといわれています。大きな岩はトラクターで砕き、畑を広げていきました。

また、土地にゴロゴロと転がる大きな岩や石にはうれしい誤算も。岩や石の多くは手で割れるくらいもろく、ミネラルを豊富に含む「頁岩(けつがん)」でした。農地にするのは難しいと思われていた土地は、熊崎さんの手で自然に恵まれた畑へと姿を変えていきました。

  • 手で割れるほど風化した「頁岩」。
    たくさんのミネラルを含んでいます。

  • 2001年に有機JAS認定農場に認定された
    農事組合法人「光輪」の相談役 熊崎さん。

小さな生き物が暮らす土は、野菜が元気に育つ土

20haもの広さの畑でカボチャや大根、にんじんなどの野菜を育てる光輪。その畑の特長は、一歩足を踏み入れただけで気付くほどの「やわらかい土」。フワフワの土を生み出しているのは、土の中にいる無数の微生物です。「おいしい野菜を育てる豊かな土とは、たくさんの微生物が暮らす土です」と、熊崎さんは言います。そんな豊かな土は、はじめからあったわけではありません。EM菌※と呼ばれる微生物を何度も土に与えて、野菜にとって有益な微生物を育ててきたことで、土壌を変えていったからです。それは、土を育てる“育土”と呼ばれています。栄養が豊富なだけでなく、土がやわらかいことで根がまっすぐと下へ伸び、大根やにんじんなどの根菜が本来あるべき自然の姿で育つという良さもあります。
※蘇生型の土壌微生物が復活するための起爆剤として応用しています。

土がやわらかいため、普通に歩くだけで深い足あとができます。

ストレスが野菜をおいしくする!雑草と育てる自然農法

土を育てる“育土”を大切にしているのが光輪の「自然農法」です。農薬を使わないだけでなく、雑草と一緒に野菜を育てることが大きな特長。「雑草は敵ではなく有用な資源なんです」と、熊崎さん。カボチャの周りに生えた雑草は、カボチャを害虫や寒さから守ってくれます。「農薬を使わないことで、自然の力を生かし、野菜を育てる良好な環境を作っています」と熊崎さん。さらに水分や栄養を取り合う関係にもある雑草は、カボチャにとって適度なストレスにもなります。そのストレスを乗り越え種を残すために、カボチャは甘い実を実らせるといいます。暑さや寒さ、そして多様な植物との生きるための競争。自然の中で生きようとする力がカボチャのおいしさにつながると熊崎さんは言います。

畑の主役は作物ですが、雑草は脇役として資源になります。
雑草を見れば畑の善し悪しがわかるといいます。
※必要な機械除草は行っています。

野菜からいただく、健康をつくる“自然の力”

60年に渡り農業に携わってきた熊崎さんは「食べ物を扱うからこそ、農業に不可欠なのは自然の力を取り入れられる環境をつくること」と、これまでの経験を振り返り、「自然に近い環境で育った野菜は、おいしいだけでなく健康にも役立つ」と、続けました。今、熊崎さんは光輪の相談役として従事する傍ら、国内だけでなくアジアやヨーロッパへ赴き、積極的に農業の指導を行っています。フランスの農地では、畑の豊かな土に驚かれたといいます。「土地に合った野菜、土地に合った微生物やその他の植物と一緒に自然循環できる、理想的な野菜づくりの環境が実現されている」と熊崎さん。近年のフランスでは有機野菜が増加傾向にありますが、日本での有機野菜は市場全体で1%にも満たないといいます。熊崎さんはそんな現状を変え、フランスで実現されているような土地ごとに合った農法での野菜づくりを、全国の畑に広げたいと言います。化学に頼らず、自然の中でおいしく元気に育つ野菜。その野菜を食べることで、私たちも自然本来の力を身体に取り入れ、健康に役立てられるのではないでしょうか。

取材協力

生産者 山中さん(茨城県神栖市)

生産者 
熊崎さん(愛知県知多郡南知多町)

ほとんど休む間もなく野菜と向き合う日々の中、芸術が好きという熊崎さんは農業指導で海外を訪れた際は美術館へ行かれます。鋭い観察眼を生かして、自然の力を取り入れる農業を行ってきた熊崎さんにとって、芸術家の目を通した世界には、また新しい発見があるようです。

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