嵐のようだと表現される更年期。閉経に向かう時期は女性ホルモンの波に悩まされ、閉経後は分泌が急激に低下することで、骨や血管の老化が進みやすくなってしまいます。更年期が終わってからも、長く続いていく人生。健康で過ごせるのか、不安が募りやすくなるものです。そんな女性の人生を支えてくれるものとして、男性ホルモンが注目されています。人生の後半を、自分らしく元気に生きていくための頼もしい味方になってくれます。
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更年期以降の身体と、これからの向き合い方
女性のライフステージと、ホルモンの変化
18歳頃〜40代前半|性成熟期
18歳頃〜40代前半、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が比較的高い状態で保たれる時期。月経周期がおおむね安定。妊娠・出産に最も適した期間です。
45歳〜|更年期
閉経を挟んだ前後5年、計10年が更年期。卵巣の機能が低下し、エストロゲンの分泌がアップダウンしながら、急激に低下。閉経に向かう過程では、ホットフラッシュや全身の倦怠感、イライラ、発汗などの症状が表れます。閉経後はエストロゲンの欠乏により、骨密度の低下や、血管の老化が進みやすくなります。
55歳〜|アフター更年期
更年期が終わると、卵巣からのエストロゲン分泌が大きく低下し、相対的に男性ホルモンであるテストステロンの割合が高くなります。脂肪のつき方や筋肉量に変化が起こり、体型が崩れやすくなることも。この先の長い人生の健康を左右する大切な時期。
65歳〜|熟年期
人生の後半。筋力や体力の低下が始まりやすい時期ですが、経験の豊かさから自分らしい生き方を形にしていける時期とも言えます。いかに、健康で自立した生活を続けられるかが大きなテーマ。楽しく自立して生きることが、健康寿命の延伸のカギに。
フレイルを遠ざけるカギ、テストステロンの働き
男性の自立度の高さはテストステロンにある!?
「エストロゲンが大きく減少する、更年期以降の女性の健康問題をどう考えるか? 医学界では盛んに議論されています。私は、そのカギを握るのが、男性ホルモンのテストステロンだと考えています」
お話をうかがったのは、女性医療クリニックLUNA横浜元町/ネクストステージの理事長であり、女性の泌尿器科治療のパイオニア、関口由紀先生。
「テストステロンには、筋肉や骨の増強、性機能の維持、造血促進、意欲や自信といった活力向上などの働きがあります。テストステロンが十分にある女性は、元気でアクティブ、性機能も良好に保たれているという傾向があります」
女性の健康課題のひとつとして、介護や支援が必要となる期間が長くなりやすいことが挙げられます。自分の力で日常生活を送れる期間を示す【健康寿命】と平均寿命の差は約12年。それほど長く、不自由を抱えて生きる可能性があるということです(下のグラフを参照)。
「男性は、女性より自立して生きられる期間が長い。私の師であり、男性医学の父と呼ばれる泌尿器科医、熊本悦明先生は、その背景にテストステロンがかかわっている可能性を指摘していました。女性にも、自立度を保つ上でテストステロンが重要になると考えていたのです」
平均寿命と健康寿命の推移
女性の傾向では、自立した生活ができない期間が12年も!
出典:厚生労働省「健康寿命の令和4年値について」
テストステロンはエストロゲンの支えにも。
自立した生活が送れなくなる要因には、認知症や、脳血管疾患、衰弱、骨折などがあります(下のグラフを参照)。これらの根底にあるのがフレイル。加齢に伴って身体・認知機能が徐々に低下した状態のことを指します。最後まで自立した生活を送るためには、フレイルをいかに防ぐかが重要になります。
「テストステロンは、フレイルを遠ざける最後の砦だと言えます。女性が最後まで、自分の力で楽しく生きるための頼もしい味方になってくれるはずです」
その理由は、テストステロンが持つ、活力をアップする働きが大きいと先生は考えています。
「エストロゲンは、気分が落ちないようにする役割を担うのに対して、テストステロンは気分を押し上げる働きがあります。何かをしたい、どこかへ行きたい。そういった意欲があれば、人は自然と身体を動かし、社会とかかわり続けます。より充実した生活を送りたいという意欲を与えてくれるテストステロンは、心身の健康につながり、人生の満足度を高める上で重要な存在と言えるでしょう」
テストステロンには、もうひとつ見逃せない働きがあります。
「閉経後は卵巣でのエストロゲン分泌は急激に減少しますが、副腎で作られるDHEAを材料に、テストステロンを経てエストロゲンが作られる別経路が働いています。テストステロンとエストロゲンは連続した関係。こうして作られるエストロゲンは、骨や血管、フェムゾーン(外陰部や腟周り)などの健康を守るためにも大切な存在です。テストステロンを保つことが、体内のエストロゲンの産生にもつながっていきます」
要介護になった主な原因
厚生労働省「国民生活基礎調査」(2022年)より作成
副腎でのホルモン代謝の流れ
男性ホルモンと女性ホルモンは連続した関係。
テストステロンを保つために、今日からできる生活習慣
分泌を促す。分泌を減らさない。
テストステロンも、加齢とともに分泌量がゆるやかに減少していきますが、日々の行動によって分泌を促すこともできます。
「最も効果的なのは、筋トレです。筋肉に刺激が入ると、回復と成長のためにテストステロンが分泌されます。有酸素運動もまた、効果的。ウォーキングなどで骨に物理的な刺激が入ると、オステオカルシンというたんぱく質が分泌されます。これは、骨の形成をサポートするだけでなく、全身の臓器に働きかけるメッセージ物質でもあります。この物質が脳にも生殖腺にも作用して、テストステロンの産生を後押ししています」
そして、食事もやはり大切。テストステロンを作る、働かせる材料を摂るようにしましょう。
「テストステロンはコレステロールを材料に作られます。適度な脂質の摂取は必要です。加えてたんぱく質。ホルモンを作る酵素や、受容体がたんぱく質でできているからです。さらにたんぱく質は、筋肉の維持のためにも必要。筋肉は摂取した糖や脂質を使う代謝の受け皿となる臓器です。筋肉量が保たれることでエネルギー代謝が安定し、テストステロンが働きやすい状態が整います。あとはビタミンや、亜鉛などのミネラル。ホルモンの合成を支える要の栄養素です」
増やすだけでなく、減らさない工夫もとり入れましょう。
「心理的ストレスはテストステロンの産生を妨げるだけでなく、体内の作用も低下しやすくなります。ストレス反応をリセットするために良質な睡眠を心がけて。呼吸法も役に立ちます」
閉経後は、呪縛から解放される時!
閉経してからの人生を、先生は〝第二の人生〟だと話します。そこからは自分のために生きる。そうすれば、フレイルを遠ざけ、最後まで自分の力で、楽しく生きていけるはずです。
「女性は、家族の世話などで人のために生きる期間が長い傾向にありますが、更年期以降は、もっと自由に、自分の好きなように生きていいのです。女性としての機能を失ったと悲しむ必要はありません。生殖の役割の終了は、ある意味で遺伝子の呪縛から解放されたということ。これからの数十年は、自分自身を最優先に、好きなことをして生きていきましょう」
テストステロンを高める習慣
1|筋トレ&有酸素運動をする。
- 筋トレは、スクワット、腕立て伏せ、腹筋、背筋を各10〜20回。3セット行うだけでもテストステロンの上昇が期待できます。週に2〜3回が理想。
- 有酸素運動として、30分〜1時間のウォーキングや軽いジョギングを。筋トレと組み合わせるとより効果的。ストレスにならない範囲で続けることが大切。
2|材料になる栄養を摂る。
脂質・たんぱく質を含むもの
肉、魚、卵、大豆製品を食事ごとにバランスよく摂る
亜鉛を含むもの(テストステロンの合成に働く)
うなぎ、牡蠣、豚レバー、牛の赤身肉、卵、チーズ、海藻など
たんぱく質の不足を防ぐ!
プロテインドリンクがお役立ち。
エネルギー代謝を担う筋肉の材料として、重要なたんぱく質。不足しがちな栄養素でもあります。気になる時は、プロテインドリンクが手軽で便利。テストステロンの合成に働くビタミンやミネラルを含むものもあります。
3|呼吸法でリラックス。
呼吸法は、自律神経を自分でコントロールできる唯一の方法。フェムゾーントラブルの予防に役立つ骨盤底筋トレーニングを組み合わせた、関口先生おすすめの方法をご紹介。
- 目を閉じて椅子に座る。お腹をへこませ、肛門と腟、尿道を締めて持ち上げる。できるだけゆっくり、口から「ふーっ」と息を吐く。
- 吐けないと思ったところで息を止める。肛門、腟、尿道をゆるめる。
- 鼻からゆっくり空気を吸い込む。
1〜3を20回くり返す。隙間時間を利用して行いましょう。
4|睡眠でストレスをリセット。
自律神経を安定させ、テストステロン低下を防ぐ基本が睡眠。さらに、深夜から明け方にかけて分泌が高まるので、十分な分泌のために、遅くとも24時には就寝を。
5|好きなことをする。
意欲的な行動で分泌を促し、それがさらなる活力源となる好循環が生まれます。好きなことを長く楽しむために、自分の健康管理に関心が高まるはず。推し活、創作、ボランティア……。夢中になれることを見つけましょう。















