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ほっこり癒しの時間

小さな観葉植物も、ストレスの良薬。私たちに“自然が必要”な理由(3/3)

掲載号 vol.57

最適解は自分が感じる心地よさ。自然セラピーの取り入れ方

好みや感じ方が効果に大きく影響

血圧が高い人も、低い人もいる。ストレス状態が高い人もいれば、低い人もいる。身体の状態は人それぞれ。それと同様に、好き、嫌いもまた、人それぞれです。自然セラピーには、この好き、嫌いが重要。それによって、快適さに差が出るからだそうです。

「“快適性”には、【受動的快適性】と【能動的快適性】があります。受動的快適性の代表的なものは、温度や湿度。適切に保たれていれば、快適だと感じますね。それは“不快ではない”ことで得られているのです。寒さや暑さなどマイナスを除去してゼロにするわけです。個人の好みや感じ方は影響を受けにくく、誰もが同じく快適になると言えます。対して能動的快適性は、ゼロではなく、プラスアルファを得ようとするもの。自然セラピーは、この能動的快適性に当たります。五感を通して能動的にプラスアルファを獲得しようとするものですから、大きな個人差が生じます。以前、小川のせせらぎ音を聞いてもらう実験で、多くの人がリラックス方向に向かうという結果が得られましたが、中には逆の変化をする人がいました。なぜかというと、その人には小川のせせらぎ音が、トイレの流水音に聞こえていたからです。好みや感じ方によって、リラックス効果が変わってきます。ですから、好きな自然の中に身を置くことが大切。快適を感じたときに、より大きな効果を得ることができるのです。木々が生い茂る鬱蒼とした森が好きな人も、景色が見渡せる森が好きな人もいるでしょう。季節やそこで見られる植物の種類にも好みがあると思います。ぜひご自身の好きな自然へ出かけてみてください」

受動的快適性と能動的快適性

大きな自然、小さな自然。生活にうまくとり込んで

自然には、森林のように大きなものから小さなものまであります。

「効果で言えば、森林が最も大きいのですが、都会に住んでいると、なかなか出かけられないということもあるでしょう。それならば、お気に入りの公園へ出かけてみてください」

部屋やベランダに、花や植物を置くだけでもよいそうです。

「バラを見る、バラの香りを嗅ぐという実験でも、それぞれリラックス効果があるという結果を得ています。ドラセナという観葉植物を使った実験でも、同様の結果が得られました。そういった小さな自然も自然セラピーになります。盆栽でも精油(植物から抽出したオイル)でも効果があるので、好みの自然をとり入れましょう」

これから本格的な夏を迎えます。森林や公園などに出かけるときは、注意が必要。高温・高湿度になる場所は、自然セラピーの効果も得られないようです。

「先ほどお伝えした、受動的快適性も自然セラピーに関係します。まずは不快でない状態でなければなりません。暑さ、寒さを感じるとリラックス効果が得られないのです。夏は涼しい場所へ、冬は防寒をしっかりして出かけましょう」

筆者はこの原稿を書きながら、長年行きたいと思っていた長野県の上高地を旅しよう、と決意しました。美しい自然の中を歩くのも、おいしいものを食べるのも今から楽しみ。しかもそれが健康につながるのですから、いいことずくめだ! と感じています!

自然セラピーの例
自然セラピーの例
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この先生に聞きました!

宮崎 良文 先生

宮崎 良文 先生

みやざき よしふみ

千葉大学
環境健康フィールド科学センター
自然セラピー研究室 名誉教授

東京農工大学修士課程(環境保護学)修了。東京医科歯科大学医学部助教(医学博士号取得)、森林総合研究所生理活性チーム長、千葉大学 環境健康フィールド科学センター教授を経て、現在、特命研究員。主な著書に『Shinrin-Yoku(森林浴):心と体を癒す自然セラピー』(創元社)、『自然セラピーの科学』(朝倉書店)などがある

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