きっとあなたは、さまざまなかたちで健康作りに取り組んでいると思います。その中に加えてほしいのが、森林浴をはじめとした“自然”に触れること。「それが健康作りに役立つの?」 と思われるかもしれませんが身体や心によい影響があると、科学的に証明され始めているのです。自然の中に身を置くことは、私たちに必要。その理由は、意外なところにありました。
“心地よさ”は、身体と心に効く!私たちに自然が必要な理由
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“心地よさ”は、身体と心に効く!私たちに自然が必要な理由
自然と触れることに予防医学的効果が
トレッキングやハイキングで、森林など自然あふれる場所へ出かけて、「気持ちがいいな」と思ったことは、きっとありますよね。自然に触れると「癒される」「リフレッシュできる」という声がよく聞かれます。筆者もやはりトレッキングに出かけると気持ちよさを感じます。木々の中を歩いていると、普段考え事ばかりしている頭の中がスッキリする感じもあって、毎回「行ってよかったな」と思うのです。多くの人がなんとなく感じている、自然による心地よさ。実はそれは、病気になりにくい身体作りに役立っているそうです。今回お話をうかがったのは、千葉大学 自然セラピー研究室の宮崎良文先生。先生も子どもの頃から自然に触れたときの心地よさを感じていたそうで、その感覚を解明するために、自然が健康に対する生理的・心理的効果を研究し始めたそうです。
「現代人はストレス状態にあります。それによって免疫機能の低下が起こり、病気になりやすい身体になっています。例えば、ウイルス性の感染症。インフルエンザや新型コロナウイルスなどです。これらは薬で症状を抑えることはできますが、ウイルスを不活性化させることはできません。だからこそ、人が本来持つ自然治癒力を高め、病気にかからないようにすることが大事。森林をはじめとした自然には、ストレス状態を改善し、病気を防ぐ予防医学的効果があるのです」
700万年のほとんどを、自然の中にいた私たち
自然に癒される、という感覚は、意外にも人類の歴史につながっているのだそうです。
「現代の環境下でストレス状態に陥るのは、私たちがこの環境に対応できていないからだと言えます。人が誕生して700万年、その進化の過程で99.99%以上を自然の中で生きてきたからです。現代の人工的な環境での生活の始まりを産業革命だと仮定すると、たった200~300年前。そんな短い間で人の遺伝子が変化することはありません。自然に触れて心地よいと感じるのは、私たちの身体が自然に対応するようにできているからなのです」
工業化でさまざまな技術が生まれ、生活は便利になりました。デジタルテクノロジーも急速に発展し、これから先も、多くのことが変化していくはずです。
「私たちは、かつての自然の中での生活に戻ることはないでしょう。発展した社会の恩恵を受けながら、ストレスを軽減し、病気にならない身体を作ることを目指すべきだと言えます。そのために、自然を上手くとり入れていけばいいのではないかと、私は考えています」
自然に触れることで免疫機能が整うなど、予防医学的効果が得られることを【自然セラピー】と呼ぶのだそうです。次ページでは、先生が行った自然セラピーの実験の結果と、そこから見える予防医学的効果をお伝えします。