内受容感覚は、共感にも関係!考えたい、共感疲労のこと
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内受容感覚は、共感にも関係!考えたい、共感疲労のこと
共感する力は社会生活に重要なもの。
感情が生まれる上で、重要な役割を果たす内受容感覚。前ページで、病気や不安に関係があるとお伝えしましたが、さらに、共感しやすさにも関係があるそうです。
「内受容感覚には個人差があり、心拍のリズムをほぼ正確に感じとることができる人もいます。このように内受容感覚が正確な人ほど、共感する力が高いことがわかっています。先にお話しした脳の島皮質は、実は自分が痛いと感じたときだけでなく、親しい人が痛がっているのを見ても同じように活動します。自分にはその感覚が起こっていなくても、相手の状態をシミュレーションして、自律神経が興奮状態になり、身体の状態が変化して、島皮質で自分の中に起こったものとして痛みの感覚が生まれるのです」
共感する力は、他者の感覚を自分のものとしてとらえることができる力だと言えます。それはコミュニケーションや、社会生活において重要なものです。
「感情、身体の状態が同期すると、仲間だと感じます。集団で生活しようとするのは人間の基本的な行動のひとつ。共感力が高いということは社会性も高いとも言えます」
3つの種類がある共感。それぞれ必要な場面が
その一方で、最近は【共感疲労】というものが問題になっています。共感力が高過ぎると、つらい状況にある人の感情に同期してしまい、その経験をしていないのに心が疲弊してしまう状態のことを言います。
「共感力は高いほうがいい、というわけでもないのです。ひと言で共感といっても、実はいくつかの種類があり、私は3つにわけています。
①経験を共有する
②相手の視点に立って考える
③同情や配慮を示す
このどれもが共感する力ですが、関係性によってはないほうがいいという考え方があります。例えば、恋人や夫婦といった親密な関係において、相手を支えるためには①②③ともあったほうがよいとされています。楽しい経験も苦しい経験もともにして、相手の立場になってみたり、悲しい感情も共有すると上手くいきます。ビジネスの関係にある場合はそれとは異なります。交渉して物事をまとめようとするときは②が重要。相手の視点に立って、『わかります、そうですね』と寄り添うことが交渉をまとめるためには大切なのです。①と③が強く働いてしまうと逆に交渉が上手く運ばない可能性が高くなると言えます」
問題になっている【共感疲労】は、看護師や介護士、心理カウンセラーなど、他者の支援やケアする職業に就く人が起こしやすいと言われています。
「そういった職業に就く人が共感疲労を起こさずに、仕事を続けていくためには①経験の共有をやめるとよいとされています。相手の苦しみや痛み、つらさを自分が経験したようにとらえてしまうと心が疲弊してしまい、仕事のミスや事故にもつながりかねません。冷たいと思われないか心配になるかもしれませんが、自分のためにも、相手のためにも不要な共感はオフにする。②相手の視点に立って考えること、そして③同情や配慮を示すことが大切です。このふたつが必要な共感なのです」
事件や事故などのニュースを見て、当事者のつらさを自分のことのように受け止め、共感疲労を起こしてしまう人もいるそうです。また、さらにつらさを感じるような情報を自ら集めてしまうという兆候もあるそうです。必要としない共感をオフにするために、情報を得る手段や量をコントロールするのも大切だと言われています。