周囲の人は笑っているのに、自分だけ違う気持ちになって違和感を覚えたり激しく怒りを感じたあと、なぜあんなに怒ってしまったのか、と後悔したり。自分の感情の表れ方に、モヤモヤしてしまうことはありませんか。それぞれの性格も関係しますが、“自分ではどうにもならない”わけではなさそうです。感情は何のためにあるのか、どのように生まれるのか?感情の正体を知れば、上手くつきあう方法が見つかるかもしれません。
わかればきっと、上手くいく。感情の正体
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わかればきっと、上手くいく。感情の正体
感情は何のためにある?その役割とは?
筆者は、感情が豊かなほうだと思っています。そう書くと“いいこと”のようなイメージかもしれませんが、そうでもないのです。例えば、ニュースなどで理不尽な事柄に接すると、怒りがこみ上げることがよくあり、友人に話すと「気にし過ぎだよ」と諭されるように返答されることがあります。それでまたモヤモヤとしてしまうのです。なぜ友人はこの理不尽な事柄に怒りを感じないのか。そして、この怒りはやはり筆者の考え過ぎによるものなのか……と。
怒りのほか、悲しみや不安が少し強い傾向にある、逆に強い感情が表れにくいなど、日常の中で起こる感情とどう向き合えばいいのでしょうか?今よりもう少し自分の感情と上手くつきあうための方法を探るべく、慶應義塾大学文学部 心理学専攻 梅田 聡教授にお話をうかがいました。さまざまな角度から感情の研究を続けている先生です。
そもそも感情は何のためにあるのか?その役割は何?そこからお聞きしてみました。
「神経学者のアントニオ・ダマシオは、意思決定に感情が関係しているという説を打ち出しています。怖いという感情は、そこから逃げるよう備えるため。怒りの感情は、敵から身を守れるだけのエネルギーを溜めるため。感情は、“どうするか”の決定を導く役割があるということです」
感情にはさまざまなものがありますが、基本感情と呼ばれる6つの感情があるそうです。
「それは、喜び、怒り、恐怖、悲しみ、嫌悪、驚きの6つです。1970年代に、アメリカの心理学者、ポール・エクマンが発表したもので、この6つの感情は顔に出る表情や特徴が万国共通だとしています。これは実はサバイバルのための感情でもあります。自分が驚いたとき、どんな表情をするか思い浮かべてみてください。目をカッと見開いていると思います。これは、敵かどうかをよく見るため。そして息を吸い込みますね?その場のにおいで危険なものがないかを確認しているのです。次に、嫌悪の表情。日本人はあまりこの表情をしないと言われていますが、例えば腐敗物を見たとき、目を細めて息を止め、口もぎゅっと結びませんか?これは、目、鼻、口のどこからもそこにあるかもしれない毒を、身体の中に入れないようにするためなのです」
フィーリングはヒト特有のもの。
「日本語では、ただ感情という言葉しかありませんが、私たち研究者は、英語のemotion(エモーション)とfeeling(フィーリング)でわけて考えます。例えば、大きな音がして、“反射的に”逃げるのがエモーション。対してフィーリングは、記憶などと結びつけて“怖い”という感情が現れるものをいいます。動物にもエモーションはありますが、怖いと感じるから逃げるフィーリングは、言語の獲得と関係しているため、ヒトに特有な部分と考えられています」
私たちに生まれる感情は、どこからくるのでしょうか?筆者は脳だと考えていましたが、脳の中だけではないのだそうです。
「脳で生まれていることは間違いありません。しかしそれだけではなく、実は感情は、身体に起こる変化が大きく関係しているのです」