胃酸が食道に逆流して起こる、【胃食道逆流症】。かつては日本人には起こりにくい病気とされていましたが2000年以降、多く見られるようになってきました。現れる症状はさまざまで原因が胃食道逆流症だと気づかないこともあるようです。また、思わぬほかの不調や病気につながることもあります。胸やけする、げっぷが出る、胃がもたれるなど胃の不快な症状を見逃さないで!
胃酸分泌量増加で、胃食道逆流症の罹患者が急増!?
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胃酸分泌量増加で、胃食道逆流症の罹患者が急増!?
以前は考えられなかった日本人の胃酸分泌増加
胃は、とてもデリケートな臓器。食べ過ぎや飲み過ぎ、精神的ストレスなどのほか加齢でもダメージを受けやすいため、何かしらの胃の不快感はきっと経験があるはずです。「よくあること」と軽くとらえているかもしれませんが、不快感が続くようなら【胃食道逆流症】の可能性があります。
「胃食道逆流症は、胃液に含まれる胃酸が食道へ逆流する病気です。胃酸は食べものと一緒に入ってきた細菌などを殺す働きがある、かなり強い酸。その強い胃酸によって食道の粘膜が傷ついたり、胃の不快な症状が現れるというものです。どちらかだけの場合もありますし、両方起こることもあります。日本人は罹りにくいとされていましたが、2000年頃から急増し、現在、罹患者は10人にひとりとも、5、6人にひとりとも言われています」
お話をうかがったのは、兵庫医科大学の三輪洋人先生。胃食道逆流症の、診療・研究のトップランナーとして知られています。
罹患者が急増した理由は、胃酸の分泌量が増えたことです。
「その背景には、ピロリ菌感染者の減少があります。ピロリ菌は胃がんなどの発症リスクを高めるため、1990年代の後半から除菌治療が始まったのです。メリットはとても大きなものでしたが、一方で胃酸分泌が増えるというデメリットがありました。ピロリ菌が胃酸を分泌する細胞を傷めつけることで胃酸が抑えられていたのです。衛生環境が整った現在ではピロリ菌の感染者はどの世代も減少。それも胃食道逆流症が増加している原因です」
加齢も胃の不調の原因に!
ロート製薬の調査では、胃もたれを感じている50 歳以上の男女のうち、52.5%が「加齢によって胃もたれの症状や、起こる頻度に変化が起こっている」と回答。実に2人に1人が、加齢による胃の変化を感じています。胃はダメージを受けやすいデリケートな器官。加齢も胃の不調の原因のひとつです。胃の不快感を放っておかないで、きちんとケアしましょう。
同じ刺激であっても感じ方はさまざま
日本における“食の欧米化”も関係しています。
「1985年までに、食の欧米化は大きく進み、肉や油、乳製品を多く摂るようになりました。タンパク質や脂質は胃酸分泌を促す作用がありますから、食の変化も胃食道逆流症を増加させる原因のひとつだと言えます」
現れる症状は、胸やけ、酸っぱいものがこみ上げてくる呑酸(どんさん)、げっぷ、胃もたれ、胃痛、腹部の痛みやなど実にさまざまです。
「胃酸が多く出るという同じ刺激でも、人によって『気持ちが悪い』『胃が痛い』『胃が重い』『お腹が張る』など症状が違うため、それが胃食道逆流症だと気づきにくいこともあります」
中には、症状が全くない人、検診でわかった人もいるのだそう。
最近では、胃食道逆流症がほかの病気につながる可能性も指摘されています。大切な胃のことを、今考えてみましょう。