空腹も、満腹も実は、ほとんどが“気のせい”
読了時間:11分
空腹も、満腹も実は、ほとんどが“気のせい”
お腹が鳴っても空腹ではない!?
脳が騙されていることは、まだまだあります。例えば、昼食の時間。お腹がグゥーと鳴ると「お腹が空いているんだな」と感じると思いますが、空腹でお腹が鳴ることはあまりないのだそうです。
「時計を見て、そろそろ12時だなとわかると、脳が“食事の時間になった”と胃に知らせます。そうすると胃は、次の食事を受け入れるために、中にあるものを腸へ送ろうとして動きます。グゥーという音は、そのとき胃の中にあった空気が動いた音。それと空腹とは必ずしも関連しません」
驚くことに、私たちが“お腹が空いているから食事をする”というのは、思い込みであることが多いのだそうです。
「本当に胃が空になるのは、前の食事から少なくとも7〜8時間かかるはずです。朝5時に食事をしていれば12時に胃が空になると言えますが、そうでなければ空腹でないのに食べているということかもしれません。12時に食事をしようと思うのは、“12時に昼食を摂るもの”だと刷り込まれているからです。小学生のとき、給食は12時に始まりました。また、食事は決まった時間に食べましょうとも教わりました。昼食は12時、夕食は夜の7時。子どものときからのその刷り込みによって、例え間食をして空腹でなかったとしても、時間が来れば食事をしようと考えてしまうのです」
食べる理由は、多くが“外からの刺激”
これもまた驚くことに、私たちは空腹か満腹かも、わかっていないことのほうが多いそうです。
「重要なのは“十分食べた気がするか”、“もっと食べられそうな気がするか”です。お腹が空いているから食べるより、おいしそうな料理を見たり、食べもののいいにおいを嗅いだりという刺激によって食べることのほうが多いのです。そういった刺激、外的な要因によって食べるという行動を【外発反応性摂食】といいます」
目の前にあるお菓子をついつい食べてしまう、というのも【外発反応性摂食】です。
「アメリカの心理学者、ワンシンク博士の研究で、デスクに、チョコレートを中身が見える透明な容器で置いていた人と、中身が見えない容器で置いていた人では、透明な容器で置いていた人のほうがより多く食べたという結果が出ています。もともと食べたかったのではなく、目に入ったから食べたくなったのだと言えます」
手を伸ばせば食べられるという状況も、外的な要因だそうです。
「同じくワンシンク博士の研究で、食べものをわざわざ立ち上がって取りに行かないといけない状況になると、食べる量が減ることもわかっています。
食べたのは
“そば”にあったから
実験3
食べ物との距離
ワンシンク博士が、大勢の秘書が働くオフィスで行った実験。チョコレートが30粒入った透明の蓋つき容器を秘書たちに配り、1週間ごとにその容器の置き位置を変更するよう指示しました。1週目はデスクの上、次の週はデスクの引き出しの中、次の週はデスクから2メートル離れたキャビネットの上に置き位置を変更すると、それぞれ食べる量に変化が見られました。デスクの上にあるときは1日平均9粒。開けるという作業がある引き出しの中だと6粒、立ち上がって歩かないといけないキャビネットの上では4粒となったのです。簡単に食べられる状況ほど多く食べることがわかります。
この結果から、簡単に食べられる状況だと、食べてしまう機会が増えることもわかります。極端な話ですが、私が単身赴任で引っ越しをしたときのことです。新居に冷蔵庫を置かず、家の外に出なければ食事ができない生活を半年ほど続けたところ、おもしろいほど体重が落ちました。食べものが常に入っている冷蔵庫があったら、きっと空腹でなくても食べていたでしょう。立ち上がって支度をして、家を出るなどの作業が面倒だと感じても、それでも食べたいと感じたら、それが本当の空腹だと言えます」