年齢を重ねると、もの忘れが多くなったと感じるもの。人の名前を思い出せなかったり、何をしようとして立ち上がったのかわからなくなったり。実は、それ、加齢だけが原因ではないようです。便利なものがあふれる今、誰もがやっている、“ある習慣”が脳を衰えさせる原因のひとつなのだとか。その習慣を続けていると、物忘れの回数が増えるだけでなく集中力や、やる気まで失ってしまう可能性まであるのです。
20代がピーク!?若い人でも脳(前頭前野)が衰える、ある習慣
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20代がピーク!?若い人でも脳(前頭前野)が衰える、ある習慣
加齢だけじゃない!?便利さが脳を衰えさせる?
「ほら、あれよ、あれ。……うーん、何だったっけ……?」。会話の途中で、人やものの名前が思い出せなくなった。何かをするために立ち上がったのに、「何をしようとしたんだっけ?」と、やるつもりだったことがわからなくなった。そんな経験、あるのでは?自分自身だけでなく、周囲の人からもよく聞くエピソードかもしれません。今はまだ「年齢を重ねると仕方ないこと!」と笑って流してしまえるかもしれませんが、そのままでは思わぬ事態を招く可能性があります。
一瞬記憶が引き出せなくなるもの忘れには、脳の【前頭前野】という部分が関係しています。
「前頭前野は【記憶】することがひとつの仕事。ワーキングメモリ(作業記憶)といい、一時的に情報を記憶し、処理をし、不要なものは削除するということをしています。例えば会話は、このワーキングメモリが働いているからできること。相手の話を聞いて内容を一時的に【記憶】し、その話の意図を読み取るという【処理】をし、話の展開によって前の情報を【削除】することで、スムーズな会話が成り立つのです。もの忘れは、前頭前野がその一連の仕事をうまくできなくなって起こると考えられます」
お話をお聞きしたのは、東北大学の川島隆太先生。日本での脳機能開発研究の第一人者で、大ヒットした“脳トレゲーム”を監修したことでも知られる先生です。
人間らしくあるために、前頭前野は大切な場所。
前頭前野の機能が低下して起こるのは、実はもの忘れだけではありません。記憶のほかにさまざまな仕事を担っているからです。
「前頭前野は、ほかに【考える】【判断する】、そして【集中する】【やる気を出す】などの働きも担っています。前頭前野の機能が低下すると、もの忘れが増えるほか、集中できなくなる、やる気が起きにくくなるということも現れます。前頭前野の働きは、人間の生活に必要なものばかり。人間が人間らしくあるために、とても重要なのです」
人間らしさのカギを握る
前頭前野の働き
- 記憶する
- 考える
- 集中する
- やる気を出す
- 応用する
- アイデアを出す
- 判断する
- 行動や感情をコントロールする
- コミュニケーションをとる
例えば、ドラマや映画を見たり、旅行をするなどどこかへ出かけたり、新しいことにチャレンジしようという気持ちも起きなくなることもあります。楽しみの多い、充実した毎日を送るためには前頭前野を衰えさせないことが大切なのです。
意外なことに、脳の衰えは、中年期以降ではなく、もっと早くから始まっているそうです。
「前頭前野の【記憶する】【考える】【集中する】【判断する】などの知的な能力は【認知機能】と呼ばれています。この認知機能は、20代をピークに徐々に衰えていきます。加齢は脳を衰えさせる要因ではありますが、普段何気なくやっている行動も前頭前野の機能を低下させる可能性があるとわかってきました。それはデジタル機器の使用。スマートフォンやパソコン、タブレットなどの使用はやはり考える必要があります」