便利な世の中だからこそ、”便利ではないこと“をする。
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便利な世の中だからこそ、”便利ではないこと“をする。
料理は面倒!?だからこそ脳が働く
読み・書き・計算のほかにも、生活に取り入れられる脳を鍛える方法はあります。ただ、それらは、少し手間がかかると感じることかもしれません。
「私たちの生活には、デジタル機器のほかにも便利なものがあふれています。それらは生活を豊かにする一方で、脳を働かせる時間を奪っているとも言えます。わかりやすくするために身体のことで考えてみてください。現代はさまざまな交通手段があり、駅などの施設にはエレベーターやエスカレーターもあって移動はとても便利です。しかし、それによって身体を動かす機会は減ってしまいました。ですから、ジムに通うなどして新たに運動習慣を持つ人も増えたわけです。それと同じように、便利なものがあふれているからこそ、手間をかけるという習慣を持つことが脳を衰えさせないために大切なのです」
例えば、料理。今はどこでも手軽に食事を買うことができる上、デリバリーサービスも充実していますから、料理をする時間が減っているかもしれません。
「調理は、【記憶容量】を増やす、強烈なトレーニングになります。献立を考えるところから盛りつけまで、さまざまな工程があります。限られた時間の中で料理を仕上げるためのプランを立て、その工程をこなしていくわけです。その間、かなり脳を働かせています」
コミュニケーションは対面に意味がある。
そして昨年から普及した、オンラインミーティング。会議も授業も、そして飲み会でさえも家にいながらできるようになりましたが、脳を働かせるためには、実際に会うことが重要だそうです。
「人と会話をするとき、言葉や表情から相手がどんな気持ちでいるのかと想像して話しますね。そのとき、実は前頭前野のある領域が活発に働き、お互いの脳の波長が同期することがわかっています。それがオンラインでは起こりません。オンライン“コミュニケーション”と呼ばれてはいますが、我々の脳はそれをコミュニケーションだと認めていない、ということです」
便利なものに頼り過ぎないこと。それが今を生きる私たちに必要なことだと言えます。
毎日できる!
便利ではないことで
脳を鍛える
遠くにいる人とでもオンラインで簡単に会話ができますが、やはり直接会うことは脳のためにも重要。会話を円滑に進めるために考えたり、相手の気持ちを察することで前頭前野だけでなく脳のさまざまな部分を働かせています。対面して行う囲碁は前頭前野が働くのに対し、コンピューターの囲碁ゲームでは前頭前野があまり働きません。できれば人に会う、人とかかわる趣味を持つなどしましょう。
自動で部屋をキレイにしてくれるロボット掃除機。とても便利なものですが、掃除も昔ながらの方法でやると脳が働きます。自ら掃除機を動かし、雑巾がけをすることは、空間を把握したり、段取りを考えたり、工夫をしたりと常に脳を働かせているのです。面倒だと感じる掃除ですが、脳のトレーニングになると考えれば得した気分になるかも!?
脳科学の世界で、前頭前野が鍛えられることが広く知られている調理。東北大学の研究で、1日30分の調理作業を約3か月続けた結果、前頭前野の機能が向上していることがわかりました。同時に、思考力と総合的作業力の高まりも認められました。同じ料理を作り続けるのではなく、新しい料理に挑戦すると、より脳を働かせることになります。便利な調理グッズに頼り過ぎないことも大切です。
もちろん
健康によいことは、
脳にもよい!
「もちろん、食事、運動、睡眠も大切。多くの人が実践しているとは思いますが、それは脳の健康にも必要なことです。当たり前のことが脳にもよい、と、最先端の科学で証明されているのですよ」
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