骨や肌と同様、常に新しいものに生まれ変わっています。新しい骨をつくるためには、適度な負荷が必要。運動不足で骨が衰えると、筋肉も衰えやすくなり、家の中で転倒してしまうケースも！？健康のためには、骨から始まる“負のスパイラル”をくい止めることが重要です。
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適度な負荷は、“骨を壊す”ために必要。
骨の健康のためには、運動で、ある程度の負荷をかけることが必要。その理由は、骨を壊すため、だと言えます。
「骨は、完成してそのまま存在しているわけではなく、新陳代謝を繰り返しています。つまり、常に新しく作り直されているのです。特に、身体の重さを支える足の骨は歩くだけで小さなヒビが入ります。そう聞くと骨によくないことのように思われそうですが、“壊れる”のは、新しいものを作るために必要なこと。ヒビが入った部分をまず破骨細胞が溶かし、次に骨を再生するための骨芽細胞がその部分を修復していきます（下記のコラムを参照）。例えるなら、舗装道路。日々利用していると、道路もやはりヒビ割れる、凹凸ができるなど傷みが生じます。それを新しく作り直すために、傷んだ道路を一度壊してから、新しいアスファルトを敷いていきます。このように、作るために、壊すという作業が大切なのです」
骨のリモデリング
骨も肌と同様、常に新しいものに変わっていきます。これを骨のリモデリングと言います。まず、古くなった骨を破骨細胞が壊し、次に新しい骨を作る骨芽細胞が、壊された部分を修復していきます。骨は2～5か月かけて作り直され、1年間で全体の20％がリモデリングされると言われています。
骨の衰えは負のスパイラルを招く。
これから寒さがいっそう厳しくなり、インフルエンザウイルスなど感染症の流行も心配。外出がためらわれるような季節を迎えますが、骨の健康を考え、できる範囲で身体を動かすことを考えましょう。
「感染症を防ぐという意味では、家にいたほうがいいでしょう。でも、運動不足によって骨が衰えると、別の問題につながってしまいます。骨は筋肉と密接な関係にありますから、骨が衰えることで筋肉も衰えやすくなります。それによってフレイルという心身の活力が低下した状態になることがあります。このような状態が続くと、風邪から肺炎を発症するなど病気に罹りやすくなる上、家の中で、何もないのに転倒し、骨折してしまうこともあります。転倒がきっかけで要介護になる人は少なくありません。骨自体が痛みを感じることはありませんが、骨折するだけで生活が一変し、健康にさまざまな影響が出てしまう可能性があるのです」
令和元年に発表された国民生活基礎調査によると【介護が必要になった主な原因】は、認知症がトップ。骨折・転倒は３位ですが、4位の高齢による衰弱も、5位の関節疾患も、骨をはじめ、筋肉や関節といった運動器の機能低下によるものです（下記のグラフを参照）。骨折で行動が制限され、筋肉の衰えが進行すると、さらに身体を自由に動かすのが困難になる、という負のスパイラルがここにあると考えられます。
介護が必要になった主な原因
「また、女性は閉経後、骨量が低下し骨粗しょう症のリスクが高くなりますから、特に骨の健康を考えることが必要です」
骨から起こる「負のスパイラル」を断ち切ること。その方法のひとつが、運動です。骨量（骨密度）も骨の質（骨質）も、年齢とともに落ちていきますが、低下の速度をゆるめることはできるのです。
骨から始まる負のスパイラル
骨折は、行動が制限されることで、筋肉まで衰え、さらに身体を動かしにくくなってしまうという負のスパイラルに陥ります
石井 優 先生
いしい まさる
大阪大学大学院
医学系研究科
生命機能研究科 教授
大阪大学医学部医学科卒業。国立病院機構大阪南医療センター・臨床研究部主任研究員・リウマチ科医師、米国国立衛生学研究所・国立アレルギー感染症研究所 客員研究員、大阪大学免疫学フロンティア研究センター 特任教授などを経て、2013年より現職。日本骨代謝学会（理事・副理事長）、日本骨免疫学会（理事）をはじめ、学会での活動多数
