感染症の流行と寒さで、思うように外に出られない今。なかなか運動できない、と感じている人も多いのではないでしょうか。運動不足になると、まっ先に「太るかも!」と心配になりますが実は、それだけではありません。身体を支え、健康を支えている骨にも悪影響。骨の衰えによって、病気になりやすくもなるのです!
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重要なものを保管する金庫のような役割も。
外出しにくい状態が続いた今年。多くの人が運動不足だと実感しているようです。運動不足で心配になるのは、「太りそう」ということ。事実、外出自粛で体重が増加した人は多いようです。ただ、運動不足で起こるのは、肥満だけではありません。実は骨にも悪影響。あまり知られていないようですが、骨は柱のように身体を支えるだけではなく、病気に負けない強い身体を保つための、重要な臓器。運動不足が長く続くと、大切な骨が衰えやすくなる上、そこから健康を損なう可能性もあるのです。
「骨は単なる硬い棒のように思われているかもしれませんが、そうではありません。その硬さから、身体を支えることに加え、重要なものをしまっておく金庫のような役割も果たしているのです。骨の中には、【骨髄】というゼリー状の組織があり、実は、ここに造血幹細胞という“さまざまな細胞のもと”があります。この造血幹細胞から、B細胞やT細胞をはじめとする免疫細胞が作られているのです(下記の図を参照)。つまり、骨は血液や免疫細胞が作られる重要な臓器。衰えれば、免疫力にも影響があると言えます」
骨の中で作られる、免疫細胞
造血幹細胞は、“さまざまな細胞のもと”になるもの。生命活動のために重要な役割を果たすことから、丈夫な骨の中にあります。B細胞やT細胞をはじめとする免疫細胞は、骨の中にあるこの造血幹細胞から作られます。
お話をお聞きしたのは、大阪大学大学院の石井 優先生。最新の解析技術を使い、骨の中で起こることと病気の関係について研究されています。
“さまざまな細胞のもと”である造血幹細胞は、胎児のときには肝臓にありますが、生まれてから骨髄に移ります。
「最初に肝臓にあるのは、胎児期には骨ができあがっていないためです。出生後、しっかりとした骨が形成されると、血流に乗って骨髄に定着します。造血幹細胞は、生命活動に必要不可欠なもの。ですから、骨という頑丈な金庫で守る必要があるのだと言えます」
骨を衰えさせないためにある程度の負荷が必要。
家の中だけで過ごしていると、1日の歩数が1000歩に満たないこともあります。そこまで歩かない状態は、骨によくありません。丈夫な骨を維持するには、ある程度の負荷が必要だからです。
「それがよくわかるのが、宇宙飛行士の例です。重力のない宇宙では、身体に負荷がかかりません。宇宙に滞在中、急速に骨量が減少することが知られています。特に地上で身体の重さを支えていた大腿骨(太ももの骨)は、わずか1か月で平均1・5%も骨密度が低下します。これは高齢者の骨粗しょう症患者の約10倍の速さです。負荷が骨の健康にいかに重要かがおわかりいただけると思います」
骨にある程度の負荷をかける運動は、10代の子どもには特に必要。一生のうちで骨量が増えていくのは成長期だけ。20歳頃には骨量が決まってしまうため、10代で運動不足になると、十分な骨量を備えられないことにもなります。
骨は衰えがわかりにくいもの。だからこそ、この機会に骨の健康を見つめ直してみましょう。