鼻が利くとは、「わずかな兆候から、役に立つ事がらを見つけ出す能力があること」(広辞苑より)。昔から、嘘や変化を見抜く力が鋭い、というような意味で「女性は鼻が利く」と言われています。実は、これ、本当の話。女性は、男性よりもにおいを嗅ぎわける力が高いのです。しかも、この力は、ココロと身体の健康にもつながるのだとか。
健康作りの味方になる、嗅覚。その力を保つ方法とは?
この力が健康につながる!女性は、鼻が利くんです。
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この力が健康につながる!女性は、鼻が利くんです。
におわなくなった!?女性はその変化に敏感。
身体のさまざまな機能は加齢とともに、衰える。悲しい気持ちになりますが、残念ながらこれは事実。特集1でお伝えした聴覚もそう。同様に、嗅覚も衰えやすくなるのですが……。もう聞きたくない! と、思わないで! 実は女性は、男性に比べて、嗅覚を保つ力が高いことがわかっているのです。
嗅覚障害のスペシャリストである、東京大学の近藤健二先生にお話をお聞きしました。
「これは何のにおいか? を嗅ぎわけるテストを行ったところ、男性に比べて、女性のほうがよかったというデータがあります(下のグラフを参照)。男女ともに年齢による変化はありますが、若い人も年配の人も、どの年代でも女性のほうがにおいを嗅ぎわける力が高いのです。私が患者さんを診ていても、そう実感します。『においがわからなくなった』と受診される方はほとんどが女性。ただ、検査をしても、多くの方はそれほど嗅覚の力が悪くなっていません。きっと、ごくわずかな変化に気づいて心配で病院に来られるのでしょう。一方、男性は「何の異常もない。においを嗅ぎわけられる」とおっしゃる方でも、検査をすると悪くなっていることが少なくありません。やはり嗅覚の力には、男女の差はあると感じています」
“女性は鼻が利く”という言葉が使われるようになったのは、もしかしたら、昔から女性のほうがにおいを嗅ぎわける力が高いことを感覚的にわかっていたからなのかもしれません。
なぜ、女性のほうが嗅ぎわける力が高いのでしょうか? はっきり理由はわからないそうですが、女性のほうが、香りに接する機会が多いからではないかと考えられているそうです。
「香水やスキンケアアイテムなどの化粧品を使ったり、料理をしたり、香りに触れる機会が女性のほうが多いですよね。それによって嗅覚が鍛えられているように思います」
確かに、入浴時だけでも、シャンプーやボディソープ、入浴剤など、好みの香りのものを使う女性は多いはず。また、掃除や洗濯の洗剤にも、よい香りのものが多くあります。
においがわからないとどんなことが起きる?
「視力や聴力を失うと、生活にどんな変化が起こるかは想像しやすいと思います。でも、においを感じられなくなるとどうなるか? 嗅覚に問題がない人には想像しづらいものです。私が診ている患者さんの中には、『家族に相談しても理解してもらえないのが一番困る』と話す人もいます」
においがわからなくなることで何が困るのか、想像しやすくするために、簡単な実験をしてみましょう。
「コーヒーと紅茶、アップルジュースとグレープフルーツジュースなど、違う飲み物を用意してください。目隠しをして、鼻をぎゅっとつまみながら、それぞれを飲み比べてみてください。きっと、どちらを飲んでいるのかわからないと思います。この実験でわかるのは、嗅覚が衰えると味がわからなくなる、ということ。食事が楽しくなくなる、というのが、まず、においを感じられなくなって困ることのひとつなのです」
“鼻が利かなくなる”と、健康の源である、食に悪影響。そのほかにも、ココロと身体への影響は、まだあるそうです。