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知っトク!?健康スキル

疲れがとれないあなたに!誰でもできる『呼吸力』を高める方法

掲載号 vol.37

生きている間、休むことなく続けている呼吸。あまり知られていないようですが、実は健康に大きく関係しています。今不調を感じているなら、呼吸の力を高めることで改善できるかもしれません。当たり前にくり返される呼吸のこと、ちょっと見直してみませんか?

記事内容

読了時間:10分

目次

生命維持だけでなく健康作りに不可欠。

生まれてから今まで、休むことなくずっとくり返している呼吸。一日だけで約2万回にもなるそうです。その数字の大きさに驚きませんか? それだけ私たちは、“呼吸に気づかない”ほど、ごく当たり前にくり返しているようです。

「呼吸と食べること。生命維持にはどちらも必要です。ただ、食事は数日摂れなくても命をつなげますが、呼吸はそうはいきません。数分止めただけで、命に危険が及びます。それほど大事な呼吸はまた、健康作りにも欠かせないものなのです」

と、東京有明医療大学の本間生夫先生。なぜ健康と呼吸は関係があるのでしょうか。それを理解するために、まず、呼吸の役割についてお聞きしました。

「身体を動かす源であるエネルギーを作り出しています。食事から摂った栄養素を、呼吸でとり込んだ酸素で燃焼させて、エネルギーを作り出しているのです。だから、生きるために食べものと呼吸が必要。呼吸は栄養と違って溜めておくことができませんから、常に呼吸を続けて酸素をとり込まないといけないのです」

エネルギーが作り出された結果、できるのが二酸化炭素。呼吸で吐き出すものなので、不要なものだと思われていますが、こちらも重要な役割を果たしています。

「血液中のpH(ピーエイチ。ドイツ語読みでペーハーとも)を調節する役目があります。pHのバランスは健康状態を左右します」

pHとは酸性、アルカリ性の度合いを数値化したもの。pHバランスといえば肌を思い浮かべる人も多いでしょう。肌のベストバランスは弱酸性。ほかにも胃液や唾液、涙、汗など、それぞれよいとされるバランスがあります。

「血液は、pH7.4の弱アルカリ性がベストバランスで、通常7.35~7.45という非常に狭い間で保とうとしています。この微細なバランスをコントロールしているひとつが二酸化炭素。血液中の二酸化炭素が多くなれば酸性に、少なくなればアルカリ性に傾きます。呼吸が上手くいかないと、二酸化炭素の調節システムも上手く働かず、ベストバランスである弱アルカリ性を保てなくなるのです。それによって、疲労感や脱力感といった不調、さらには免疫力の低下によってさまざまな病気が引き起こされる可能性があります」

呼吸機能の衰えで、肺に残る空気が増える。

呼吸を上手くできなくなる原因のひとつは、加齢による呼吸機能の低下です。

「呼吸は、肺の周囲にある肋間筋をはじめとする呼吸筋の収縮・弛緩で行われます。この呼吸筋もやはり加齢で衰えます。それによって起こるのが機能的残気量の増加。つまり、肺の中に空気が多く残ってしまうのです。少量は肺をつぶさないために必要なのですが、必要以上に多くなると、新しい空気をとり込むスペースが狭くなってしまいます。いったん空気を吸ってみてください。その状態からさらに空気を吸い込むのは苦しいはずです。肺に空気が多く残ると、新しい空気を入れにくくなるのです」

肺の機能的残気量が増えると、空気の出し入れに余裕がなくなり、浅くて速い呼吸になってしまいます。その結果、血液中の二酸化炭素が増え、pHバランスがくずれるのです。
生きるための基本的なこととして、何も考えずにくり返している呼吸。これを見直すことが健康作りにつながります。

呼吸が乱れると、心も乱れる。

感情と呼吸のリズムは同じ場所で生まれる。

呼吸が上手くできなくなる原因は、加齢による呼吸筋の衰えもひとつですが、実はそれだけではありません。呼吸に問題を抱えている人は、若い世代にも増えているのだそうです。

「喫煙やアレルギーなどの原因も考えられますが、特に影響していると思われるのが、不安や緊張などのストレスです。現代社会は多くの人が過剰なストレスにさらされ、気づかないうちに、浅くて早い呼吸になってしまっているのです」

それによっても機能的残気量が増え、身体の不調にもなります。
感情が高ぶると呼吸が早く、落ち着けばゆっくりになる。思い当たることはありませんか?

「それは、呼吸と感情がリンクしているからです。呼吸のリズムを生み出す中枢は脳にいくつかあり、扁桃体もそのひとつです(下の図を参照)。

呼吸のリズムを生む中枢は感情を生む扁桃体にも。

呼吸のリズムを生む中枢は感情を生む扁桃体にも。

実は呼吸は3種類あり、それぞれリズムを生み出す中枢は、脳の別の場所にあります。感情に伴って変化する呼吸は「情動性呼吸」といい、中枢は扁桃体にあります。扁桃体は感情を生み出す場所。緊張や不安を感じたときに呼吸が早くなるのは、扁桃体が感情を生み出す場所でもあるからです。感情の変化によって呼吸も変化しますし、その逆もあるのです。

扁桃体は大脳辺縁系の中にあるアーモンドのような形をした神経細胞の集まりで、喜びや安心、幸福、そして悲しみ、不安や恐怖などの感情に関係しているところです。つまり扁桃体は、呼吸のリズムを生み出す場所であり、さまざまな感情を生み出す場所でもあります。ですから、呼吸のリズムには、さまざまな感情が反映されるのです」

先生の実験で、不安の度合いと呼吸数を調べたものがあります(下のグラフを参照)。

不安が大きいほど、呼吸が早くなる!

不安が大きいほど、呼吸が早くなる!

不安と呼吸の関係を調べた結果。被験者は、指に電流が流れる装置をとりつけられた10人。いつ電流が流れるかわからない状況に置かれた被験者の、不安度と呼吸数を計測。被験者が不安を感じている間、呼吸数が増加し、それに合わせて扁桃体が活動していることがわかった。呼吸数の増加は、不安度が高い人ほど見られ、不安度の低い人はあまり見られなかった。

※グラフの青い点は10人の被験者のそれぞれの数値。間を通る赤線は10人の平均値を示しています
参考文献:Respiration Physiology 2001

「その実験で、不安と呼吸数が相関していることがわかりました。不安度が高いほど呼吸数が多くなるのです。自分の呼吸が早くなっていることに気づいて、さらに不安を感じ、呼吸数が増えるという悪いスパイラルに入ってしまうこともあります」

緊張する場面などで深呼吸をするのは、気休めではなく理にかなったことなのです。

「呼吸のリズムはネガティブな感情だけを反映するわけではありません。不安定な感情は不安定な呼吸のリズムを生み、安定した感情は安定した呼吸のリズムを生むのです。逆に、呼吸で感情をコントロールすることもできます。深呼吸で気持ちが落ち着くのもそうですし、先ほどの、悪いスパイラルもそのために起こります。呼吸と感情がリンクしているとはそういう意味なのです」

心と身体を変えていく呼吸の大いなる力。

ため息はよくないもののようですが、実は過度の緊張状態を緩めるための防衛反応なのだそう。

「ため息自体は悪いものではありません。ゆっくり息を吐き出すことで、心をリラックスさせようとしているのです。ただ、これは心の危険を知らせるサインでもあります。うつ病の人はため息の回数が多いのです」

先生は東日本大震災後、岩手県の小学校を訪ね、被害にあった子どもたちに呼吸を指導する活動を続けています。そこで改めて呼吸の力を感じたのだそうです。

「子どもの多くはPTSD(心的外傷後ストレス障害)と思われる症状がありました。感情が不安定で、不眠や体調不良を訴える子どもが多かったのです。彼らの呼吸は、やはり浅く早かった。私が考案した呼吸体操を指導し、深くゆったりした呼吸ができるようになると、彼らの不調が格段に減り、感情も安定しました。心の底、身体の底から笑顔を取り戻していく子どもたちの様子を見て、呼吸には“人を回復させる大いなる力”があると、改めて感じました」

大事なのは、楽しむこと:呼吸力を高める方法。

大きな声で歌うのも、よいトレーニングに!

「呼吸には大いなる力がある」。呼吸法が基本となる、ヨガをやっている人なら先生のその言葉がよく理解できるのではないでしょうか。最近注目されているマインドフルネス(簡単に言えば瞑想のようなもの)も、姿勢を正して、呼吸に意識を向けるのが基本。集中力が高まる、ストレスが解消されるなどのほか、うつを防ぐ効果も期待されています。呼吸を変えるだけで、身体と心の健康作りになるのです。

「年齢を重ねれば、呼吸筋が衰えてくるのは、自然なことです。老化は避けられないものですが、そのスピードを緩やかにすることは誰にでもできます。ヨガやマインドフルネスも呼吸筋を鍛えるいい方法です。ほかにももっと気軽にできることもあります。肺から空気を出し切ることなら、なんでもトレーニングになります」

大きく声を出すこともよいトレーニングに。歌うことも大きな声を出すので効果的だそう。

「カラオケに行くのもいいですし、わざわざ出かけなくても家でだってできます。家でならお風呂で1~2曲歌うのがおすすめ。湯気は喉や肺にもやさしいので、ケアにもなります」

大きく声を出すことに加え、“声を長く出す”とさらによいそう。詩吟やお経を読むこともトレーニングになります。

「一語一語をテンポよく音読することで呼吸筋が鍛えられます。和歌や俳句などにとり入れられている、七五調リズムがある文章は、日本人の呼吸に合ったリズムだと私は考えています。家で、日本語の名文を音読するのもいいでしょう」

肺から空気を出し切る“吹く楽器”や、スポーツ吹き矢などもいいそうです。

「吹く楽器は、ハーモニカやピアニカ、オカリナやリコーダーなどが、気軽に始められる上、高齢者の身体への負担も少ないのでおすすめです。スポーツ吹き矢は、カルチャーセンターなど、できる場所が増えているようですよ」

楽しんで続けることが呼吸のケアになる。

先生が紹介してくれたトレーニングは、簡単で、楽しめる要素があります。

「大事なのは、楽しむことです。そのトレーニングがストレスになってしまうと本末転倒。先ほど申し上げたように、呼吸と感情はリンクしていますから、心が楽しいと感じることも、呼吸のケアになるのです」

呼吸筋を鍛えることだけでなく、リラックスする時間を持つことでも、呼吸は変わるのだそう。

「ある高齢者施設で、不安度と呼吸数を計測しています。そこで高齢者に生け花をやってもらうと、呼吸が落ち着き、不安度が下がることがわかりました。生け花は月に一度だけなのですが、それでも継続することが心身にいい影響を与えているようです」

周囲の人の呼吸に気を配ることも、健康の輪を広げることになります。

「自分の呼吸は気づきにくいものですが、変化に気づくことはとても大切です。変わろうと思ういい機会になるのですから」

当たり前にくり返すだけだった呼吸。深く、ゆっくりした呼吸が大切だと気づけたなら、それはすでに健康への第一歩なのです。

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この先生に聞きました!

本間 生夫 先生

本間 生夫 先生

ほんま いくお

東京有明医療大学 学長

東京慈恵会医科大学卒業。医学博士。昭和大学医学部第二生理学教室教授、東京有明医療大学副学長などを経て、2017年より現職。専門は呼吸神経生理学。昭和大学名誉教授。NPO法人「安らぎ呼吸プロジェクト」理事。著書に『すべての不調は呼吸が原因』(幻冬舎新書)、『心と体をラクにする 呼吸スイッチ健康法』(大泉書店)などがある

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