味噌汁や吸い物をはじめ、うどん、蕎麦、煮物、おひたし。私たちになじみ深い数々の料理。そのおいしさには、だしの力が大きいことはよく知られています。だしが生み出すうま味は、おいしさに加えて、実は肥満予防にも大いに役立っているのです。おいしさを支え、そして健康にもつながるだし。今日からきちんと取りたくなる、その力をお伝えします。
『昆布だし』+『かつおだし』でうま味が7倍に!肥満予防にも効果が
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『昆布だし』+『かつおだし』でうま味が7倍に!肥満予防にも効果が
昆布+かつお節にうま味の相乗効果が。
ある編集部メンバーが体験した出来事。外食などで洋食が続いたある日「白いご飯を食べたい!」と思い立ち、味噌汁にほうれん草のおひたし、ひじきの煮物などを準備。夕食の席で14歳の息子が「こういうのが食べたかったんだよねぇ」と、しみじみ話したのだそう。和食のおいしさを支えているのはだし。大人だけでなく、子どももそのおいしさがわかるようです。
「西洋料理や中華料理は、インパクトを重視することが多いのですが、日本の料理はそうではありません。派手さよりも“障り”がないことをよしとします。つまり、食材の邪魔にならないこと。素材の味を引き立たせるために、うま味のあるだしを使うのです。しみじみしたおいしさはそこからくるものなのですよ」と、龍谷大学の伏木 亨教授。
魚介や肉、野菜などさまざまな食材と、長い時間を使って作り上げるソースやスープと違い、和食のだしは、干し昆布やかつお節、イワシの煮干しや干し椎茸などを短時間で煮出します。
「ソースやスープは味を凝縮させるために多くの食材と時間を使いますが、日本のだしは取り方がシンプル。それは、うま味に特化しただしを取るためです」
うま味はその名称から“おいしい味”と誤解されることもありますが、甘味、塩味、酢味、苦味の基本の味覚に加わる、5番目の味覚のこと。アミノ酸の一種であるグルタミン酸・アスパラギン酸、核酸の一種であるイノシン酸・グアニル酸などが、日本のだしにあるうま味の正体です。
「昆布はグルタミン酸とアスパラギン酸の含有量が飛び抜けて高い、うま味成分の王様と言えます。アミノ酸のうま味だけでも悪くはないのですが、そこに核酸のうま味を加えると飛躍的に強いうま味となります。昆布と、イノシン酸を含むかつお節の合わせだしが和食の基本となったのは、“うま味の相乗効果”を利用して到達したものなのです」
家庭で使われる顆粒だしにも、このうま味の相乗効果が利用されています。
あまり知られていませんが、昆布は“海で二年、陸で三年”と言われています。出来上がるまでに実に5年。かつお節は完成までに半年。煮たかつおを、燻す・麹菌をつけるという作業が繰り返し続けられます。
「だしを取る時間は、1時間程度。しかもほぼ放っておくだけです。おいしさを生むためにかかる長い時間を、料理をする人に代わって、だしが受け持ってくれていると言えるでしょうね」
昆布やかつお節を煮出すだけのだし。シンプルですが、肥満予防にも役立つのだそうです。だしが持つ健康への機能とはどんなものなのでしょうか?
資料提供:NPO法人うま味インフォメーションセンター
料亭の一番だしを使ってうま味の強さを比較。昆布だしにかつお節を加えることで相乗効果が起こり、昆布のみに対して7~8倍にも強くうま味が感じられることがわかります。