腸内細菌の好物で、〝いいもの〟は作られる。
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腸内細菌の好物で、〝いいもの〟は作られる。
腸内細菌はあなたが食べたものを餌にして、あなたにとって“いいもの”を作ってくれます。いいものを作ってもらうには、あなたが腸内細菌の好物を摂ることが大切。さて、それは何なのでしょうか?
長期的に食べるもので腸内フローラが作られる。
「腸内細菌の種類やバランスは、長期的に食べているものによって決まることがわかっています。私たちが食べるものが彼らの餌になるわけですから、偏りなくきちんと食べることが、腸内フローラの多様性を維持するには重要でしょう」
脂肪分の多いものを食べる欧米人の腸内環境は、それに適したバランスになっています。脂肪分の多いものを食べると、脂質を吸収するために胆汁の分泌量が増えます。胆汁は腸内細菌にとって苦手なものなので彼らには過酷な状況になりますが、それでも生き残れる腸内細菌のみが腸内に住み続けられるわけです。
好物の食物繊維で宿主にいいものを作る。
日本人の食は、この60年ほどで変化し、米のほかにパンやパスタ、魚のほかに肉などさまざまなものを食べるようになりました。
腸内細菌には好物があります。それを腸まで届けてあげれば、彼らはパフォーマンスを最大限に発揮してくれます。その好物とは、食物繊維。彼らはそれを食べて、短鎖脂肪酸など、私たちの身体にいい成分をたくさん作ってくれるのです」
短鎖脂肪酸とは、腸内環境を整えるだけでなく、免疫系や代謝系に働きかけ、例えば脂肪の蓄積を抑えたり、消費を増やしたりしてくれる成分。糖尿病の改善にも効果があると報告されています。腸内細菌は、人が栄養に変えることができない食物繊維を、いいものに変えてくれているのです。
古来からの食事は食物繊維が豊富!
食物繊維は、野菜だけでなく、海藻や豆、きのこ、果物、穀物などにも含まれます。現代人は、不足していると言われていますが、実は普段食べている和食に多く含まれているのです。
「食生活の欧米化によって、食物繊維が摂りにくくなったようです。昔から日本人が食べていた食事には、食物繊維が豊富に含まれています。やはり和食が日本人の腸に合うのかもしれません」
食物繊維だけでなく、糖質も腸内細菌の大好物。米やいもに多く含まれていますから、やはり和食を食べると、腸内細菌の好物を摂りやすくなると言えます。「細菌の力を借りて作られた発酵食品も栄養が豊富です。発酵食品の代表格、ヨーグルトは自分の腸に合ったものを食べるとよいでしょう。同じ銘柄のものを1~2週間試してみて、体調や便通がよくなったら自分の腸に合うヨーグルトだと判断できます」
現在も腸内フローラの研究はさまざまな方面で進められています。将来的には、一人ひとり違う腸内フローラに合わせた、その人が病気にならないための食べ物やサプリメントがわかるようになるかもしれない、と先生。
「将来的には、血液検査のように、腸内フローラを検査することで、病気のリスクが評価できるようになるかもしれません。そうすれば、腸内フローラの乱れが疾患発症の素因と考えられるような、さまざまな病気の早期発見につながると考えています」
腸内フローラはあなたにとっての“大切なパートナー”。あなたがきちんと食べることは、あなただけでなく、腸内細菌にとっても大切なことなのです。