お腹を満たすだけでなく、栄養を考えて“きちんと食べる”こと。それは身体と心を作るために、とても大切なことです。そして近年、あなたの食べたものが、“お腹の住人”にとっても大切であることがわかってきました。お腹の住人・腸内細菌もまた、あなたの食べたものを糧にしてあなたの健康を守っているのです。食の大切さを実感できる、腸内細菌のチカラをお伝えします!
お腹の住人腸内細菌があなたを守る!
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お腹の住人腸内細菌があなたを守る!
“食べたいもの”は、腸内細菌が決めている!?
「お肉が続くと野菜が食べたくなったり、海外へ行って何泊かすると和食が食べたくなったり、という経験はありませんか?それはもしかしたら、お腹の中に住んでいる腸内細菌たちが自分の食べたいものを訴えているのかもしれません。つまり、人が食べたいものを選んでいるのではなく、腸内細菌が食べたいものを決め、宿主である人がそれを選ぶように導いている……なんてことがあるかもしれません」
そう話すのは、腸内環境研究の第一人者である福田真嗣先生。病気ゼロ社会の実現を目指し、研究成果を社会に活かすためのバイオベンチャー企業も経営しています。
食べるものを腸内細菌が決めている!? とは、まるでSF映画のような話。しかし近年、それが絵空事とも言えないような、腸内細菌のさまざまな働きがわかってきたのです。
腸内細菌の集団は、“もうひとつの臓器”。
私たちの腸の中にはおよそ1000種類、数にして100兆個もの細菌が住んでいます。彼らが助け合ったり、競い合ったりして築いているコミュニティは腸内フローラと呼ばれています。便通改善との関係はよく知られていますが、それだけではなく、想像をはるかに超えるようなレベルで、健康に深くかかわっているのです。
「腸内細菌に関する研究が加速度的に進んだのは10年ほど前です。それまではわからなかった腸内フローラの全容が、遺伝子解析技術の進歩によってわかるようになり、その重要性も見えてきました。そして、腸内フローラの機能が、人の健康に大きく関与していることが次々に明らかになってきたのです」
免疫が暴走することによって起こるアレルギーや、代謝系疾患である肥満や糖尿病などの予防・治療にも腸内フローラが役立てられているそう。
「腸内フローラは目には見えませんが、“もうひとつの臓器”と言っても過言ではないほど大切なもの。真の健康のためには、身体だけではなく、腸内フローラも考えることがとても重要です」
いつもは私たちの健康を守ってくれている腸内フローラですが、そのバランスに乱れが生じると、健康に影響が出てしまいます。
「腸内フローラのバランスが崩れてしまう原因は、ストレスや薬の摂取などさまざまですが、暴飲暴食などの影響もあります。腸内細菌は人が食べたものの未消化分を糧に生きていますから、私たちの食事内容が大きく変わると、腸まで届く彼らの“餌”も変わってしまうため、腸内フローラのバランスが変化することがあります」
私たちが食べものなしには生きていけないように、彼らもまた糧がないと生きていけなくなってしまう。それを思うと、「腸内細菌が人の食べるものを決めている」という話も、ありえないことではないかもしれません。彼らの住む腸は“第二の脳”とも言われ、迷走神経を通じて脳とつながっていますから、なおさら大きく頷けます。
“きちんと食べる”ことは、あなたの身体はもちろん、あなたの身体を守ってくれる腸内細菌にとっても大切。この特集では、それを実感する腸内細菌の持つ驚くべき力の数々をお伝えしていきます。