身体ではなく、疲れているのは、実は脳。
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身体ではなく、疲れているのは、実は脳。
私たちが普段感じている疲れは、細胞の錆びつきから起こるもの。そう聞いても、ピンとこないかもしれません。疲れとは長いつき合いであるはずなのに、知らないことのほうが多いもの。アンチエイジングのために、まず疲労の正体を探っていきましょう。
身体を調整する自律神経が最も疲労。
仕事や家庭のことなど慌ただしい毎日の中で、ごくごく当たり前に感じている疲れ。細胞が傷つき錆びることで、本来の機能を果たせなくなる状態が、いわゆる“疲れている”という状態なのです。
「デスクワークでは、考える作業が続くので、頭が疲れたと感じますね。これは、脳に負担がかかって、脳細胞や脳にある中枢神経の細胞が傷つき錆びてしまうからです。パソコンに向かって仕事を続けていると、ぼーっとしたり、ミスが多くなったりするのはこのためなのです」
使った部分、つまり負担をかけた部分の細胞の錆びが疲労を生み出すということ。しかし、驚くべきことに、スポーツなど身体を使う運動による疲労も、身体ではなく脳の細胞が錆びることによって起こっているのだそうです。
「もちろん、筋肉細胞も錆びているのですが、日常的な労働や、一般的なスポーツでは筋肉はさほど疲れてはいません。本当に疲れているのは脳です。身体を動かすと、体温が上昇したり、呼吸や脈拍が早くなったりしますね。そのままの状態が続くと生命維持ができなくなりますから、発汗で体温を安定させたり、呼吸や脈拍を穏やかにしたりと、脳にある自律神経が秒単位で調整しているのです。最も負担がかかっているのは自律神経。つまり、脳が疲れているのです」
活性酸素にはいい働きと悪い働きが!
では、何が原因で細胞は錆びついていくのでしょうか?
「細胞を錆びさせているのは、活性酸素。活性酸素が疲労のおおもとだと言えます」
活性酸素とは、呼吸によってとりこんだ酸素の一部が変化して発生するもの。
体内に侵入した細菌やウイルスを撃退するいい働きがありますが、増え過ぎてしまうと、正常な細胞をも傷つけてしまう、やっかいな面もあります。
「活性酸素は、呼吸をしている以上はどうしても発生します。しかし、ただ呼吸をしているだけでどんどん細胞が錆びていくわけではありません。通常、身体には活性酸素から細胞を守るシステムが働いているからです。しかし、激しい運動や強いストレスなどによって活性酸素が一気に増えると、細胞を守るシステムの処理能力を超えてしまうのです」
呼吸によってとりこまれた酸素の一部が変化し、発生する活性酸素。細菌やウイルスを撃退するために働く善玉作用がありますが、増え過ぎると細胞を傷つけ酸化させてしまう悪玉作用もあります。この悪玉作用が、疲労や老化につながっていきます。
見逃してはいけない脳からの疲れのサイン。
細胞を錆びつかせているのは、あふれ出した活性酸素。自分の能力を超えた激しい運動や、ストレスを感じながら仕事を続けることは、疲労を蓄積させ、老化を進めてしまうことになるのです。
「長く同じ作業を続けていると『飽きた』『眠い』と感じるものです。それは脳が発する疲れのサイン。これ以上、身体を使わないで、早く休ませて、というサインなのです」
疲れは、防御反応であると先生。痛みや発熱と同様、命を守るためのアラームであるにもかかわらず、人間だけがそれを無視してしまうのだそうです。
「ライオンは、空腹で獲物を追っている最中でも、疲れを感じたら追うのをやめます。しかしヒトは、意欲や達成感を司る前頭葉がほかの動物に比べて発達しているため、疲労感という命を守るためのサインがかき消されてしまうことがあります。こうして起こるのが過労死。疲れのサインを見逃してはいけません」
勤勉な人が多い日本では、なかなか休息をとりにくいもの。でも、無理をして健康を失ってしまうのは決していいことではありません。「身体を休めて」。内からの声に応える勇気も持ちましょう。