身近な食品で、病気にならない未来へ。
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大澤俊彦 先生
おおさわ としひこ
愛知学院大学 心身科学部
健康栄養学科 教授
1969年、東京大学農学部農芸化学科卒業、74年、同博士課程修了。オーストラリア国立大学リサーチフェローなどを経て、名古屋大学大学院 生命農学研究科教授に。2010年より現職。食品機能化学が専門
身近な食品で、病気にならない未来へ。
健康な身体を作るのはやはり、バランスのよい食事。そして、そのとり入れ方は、決して難しいものではないということもわかりました。
アメリカでは20年間、がん死亡者が減少。
日本人の生活習慣病やがんが増加した背景に“食の欧米化”があると、かねてから言われています。戦後、欧米スタイルの食事が普及し、高脂肪・高タンパクの肉やバター、砂糖の摂取が多くなり、逆にビタミンやミネラル、食物繊維の摂取が減少したことから、そう言われるようになりました。
そういったことから、アメリカには生活習慣病大国であるかのようなイメージがあります。しかし、それが近年変わってきました。昨年のアメリカがん協会の発表によると、ここ20年間、がんの死亡者数が減少し続けているのです。
「これは、食生活の改善によって、がんをはじめとする疾病予防に長年取り組んできた成果であると考えられます」と、愛知学院大学の大澤俊彦先生。
1960年代後半のアメリカでは生活習慣病が増大。医療費がふくれ上がったことから、治療ではなく予防を重視するようになりました。そして、食事や運動を通じて病気を予防する取り組みが盛んに行われるようになったのです。
「そのひとつが、1990年からアメリカの国立がん研究所が開始したデザイナー・フーズ計画です。野菜や果物などに含まれる成分ががん予防効果に対して、どのような機能を果たすのかを科学的に解明しようという計画です。この研究から、がん予防が期待される食品として約40種類がリストアップされました」
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第七の栄養素フィトケミカルが重要。
大澤先生は、デザイナー・フーズ計画に日本から参加したひとりです。
「五大栄養素や、第六の栄養素とされる食物繊維も健康には重要ですが、その計画では第七の栄養素であるフィトケミカル(植物性食品の色素や香りなどから発見された化学物質)が、がん予防に期待ができるとわかったのです」
大澤先生は、デザイナー・フーズ計画でリストアップされた食品を中心に、日本人のがん予防に重要とされる食品を加えた12の食品群をまとめました(左の表参照)。そこに挙げられている食品には、がん予防のための、3つの力があるのだそうです。
「老化やがんの発生に深く関係する活性酸素を消去する【抗酸化力】、発がん物質を排泄する【解毒力】、免疫機能を高める【免疫力】です。例えば肉が大腸がんのリスクを高めるとされるのは、肉に含まれる不飽和脂肪酸が過酸化脂質に変化し、腸内に滞留すると考えられるからです。過酸化脂質を減らすには、抗酸化物質が有効。肉と一緒に野菜を摂るといいと言われるのは、野菜に抗酸化力が備わっているからなんです」
3日で、まんべんなく12の食品群を摂る。
12の食品群を食生活の中で、どのように摂ればいいのでしょうか?
「その食品を摂った後、抗酸化力は3~8時間持続します。それに加えてヒトが本来持っている解毒力を高める作用が72時間持続すると考えられています。そこから考えると、3日かけて12の食品群をまんべんなく摂れるようにするといいでしょう」
毎日すべてを摂るということではないので、とり入れることは難しくはありません。しかもどれもが私たちにとって身近な食品。チョコレートなどの嗜好品も含まれます。
「おすすめの料理はカレーです。サラダとデザートに果物をプラスすると、12の食品群から多くの食品を摂ることができますよ」。
食を選ぶこと、考えることを楽しみながら、健康な身体と笑顔あふれる未来を作っていきましょう。
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