糖尿病の人ほど、おいしいものを選んで
糖尿病になると
好きなものを食べられない？
食事を考えて選べる
美食家になりましょう。
選ぶことを楽しんで、バランスのよい食事を。
過食や高脂肪食の摂り過ぎ、肥満などが原因になっていることから、糖尿病の治療には厳しい食事制限が避けられない。 そんなイメージを多くの人が持っているようです。 「心筋梗塞で倒れ、運び込まれた患者さんのひとりに、“糖尿病放置病” 歴が10年もある男性がいました。その10年間、奥さんにも糖尿病であることを隠していたそうです。なぜこんなに症状が重くなるまで放置していたのでしょうか？ 聞けば、『糖尿病の治療を受けると、食事制限のために好きなものを食べられなくなるのでしょう？』という返事でした」 これを読んで、この患者さんの気持ちがわかる、と思いませんでしたか？ しかし先生によれば、糖尿病治療は、厳しい食事制限はないのだそうです。 「糖尿病がある人こそ、美食家であるべきなんです。食べるものを制限するのではなく、“選べるようになる”と考えるといいのではないでしょうか」 先生が言う美食家とは、素材本来が持つおいしさを味わい、適量楽しむ人のこと。量と回数を抑えれば、甘いものや果物を食べてもよく、血糖値のコントロールが良好で、合併症がない人であればお酒を少し楽しんでもいいのだそうです。 「私は、糖尿病だと診断された患者さんに、『これまで無関心だった食事の内容や量に、毎回関心を持ってくださいね』と伝えています。その言葉を励みに、ご自身の生活に興味を持って、健康な状態になろうと前向きになれるようです」 制限するのではなく、選ぶと考えることで前向きな気持ちになれ、糖尿病の改善に必要な運動にも、積極的に取り組めるようになるそうです。 糖尿病は治療と食事、運動でコントロールできる病気。放置しなければ、本当に食事を楽しめなくなってしまう重い合併症を避けることができます。糖尿病は、健康的な生活を考えるきっかけになるのです。
糖尿病には糖質制限がいい。- 極端な制限はよくありません。
血糖値を上げない工夫も
とり入れて。
抑えるのは大事。極端な方法は×。
糖尿病の食事療法として効果があるとされる“ 糖質制限”。ご飯やパン、麺類、芋類など糖質が高いものを控え、肉や魚など、タンパク質や脂質を含むものを中心に食べるというものです。糖質を抑えて血糖値の上昇を抑えるのが目的でしたが、カロリー計算がいらないことからダイエット法としても広がり、その中で“ 糖質を一切摂らない” など、極端な方法も現れました。 「糖質を悪者だと考えて、摂らないようにするというのはよくありません。糖質が分解されて作られるブドウ糖は、脳をはじめ、全身の細胞にとって大切なエネルギー源。人体の活動のために、毎日約400ｇものブドウ糖が使われているのです」 １食あたりのご飯の量が、体型や活動量に見合う量を超えている場合は減らす必要がありますが、ご飯を摂らずに、肉や魚、野菜だけの食事にするのはよくありません。 「ご飯やパンなどの主食を減らすと、脂質を摂り過ぎることにもなりかねません。そうすると中性脂肪が増え、動脈硬化のリスクがさらに高くなってしまいます」 糖尿病者は非糖尿病者に比べ、動脈硬化が早く進行するというデータがあります。間違った糖質制限が、もともと高い動脈硬化のリスクを一層高めてしまうこともあるのです。「 糖質制限をするよりも、食べ方を工夫するとよいでしょう。食事の最初に野菜など食物繊維を多く含むものから食べるようにしたり、噛む回数を増やしてゆっくり食べるようにするなど、血糖値の上昇を抑えられる食べ方があります（次ページに紹介あり）。そういった工夫もとり入れながら、ずっと続けられる食事方法を考えましょう」
糖尿病放置病は、合併症を引き起こし医療費を増大させている！
糖尿病が引き起こす合併症は、精神的負担はもちろん、経済的な負担も相当に大きなものになっています。
例えば、腎不全で人工透析が必要になった場合、１年にかかる医療費は約600 万円！ これが生涯続きます。
ただし日本には健康保険をはじめさまざまな制度が整備されているため、実質的な本人負担額は月1万円。年間でも12万円の負担だけですむのです。残りの588万円はどこから捻出されるのでしょうか？ それは国民が払う保険料でまかなわれています。 糖尿病を放置することは、将来自分が支払う保険料を増やすことにもつながります。国民皆保険制度を破たんさせないためにも、放置せずに早期の治療を！
