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ほっこり癒しの時間

動物が医療で活躍!?健康を助けるアニマルセラピーとは(3/3)

掲載号 vol.19

記事内容

読了時間:15分

もっと知りたい!動物のこと、セラピーのこと。

Question1動物を飼えば、誰でも健康効果が得られるの?
Answer健康効果など人にとってのメリットは、関係を築く中で自然に生まれてくるもの。動物と暮らすことがストレスになってしまう人や、動物と自分だけの世界に閉じこもってしまう人もいますから、すべての人に健康効果があるとは言えないでしょう。動物に過大なメリットを求めて飼うのではなく、動物が好き、動物と暮らしたいという気持ちで、自然に動物と付き合うほうがいいと思います。
Question2ペットロスが怖い。健康効果より、心の傷のほうが大きいのでは。
Answer大切な伴侶を失うわけですから、そのつらさは大きなもの。心が回復するまで時間がかかる人もいますが、ペットロスは実は重篤化しません。うつ状態に陥る人もあまりいないんです。おそらくは、その動物の死を看取ることが飼うことの前提にあるからでしょう。これまでに見てきたケースから考えて、ペットロスがこじれてしまった場合は、何かほかの原因が重なっていることが多いように思います。
Question3ぬいぐるみでは健康効果は得られない?
Answer安らいだり、愛おしさを感じるなど心によい作用があると思います。ただ、散歩や食事など世話をすることがないので、本物の動物と過ごすのとは違う効果なのだと思います。私はロボットを使ったセラピーについても研究しているのですが、ロボットと触れ合うことは、ごっこ遊びに近いように感じます。ロボットを中心にした、周りの人たちとの円滑なコミュニケーションが、人に幸福をもたらしているようです。
Question4アニマル・セラピー適した動物は?
Answer可愛らしい動物だけがセラピーに参加しているように思われるかもしれませんが、実はそうではないんですよ。その人の育った環境なども大きく影響するので、虫や蛇を参加させる場合もあるんです(下で詳しく)。虐待にあった子どもが、同じように虐待にあった動物と心を通じ合わせることもあります。ただ、知能が高く人間に近い猿や、臆病な性格のウサギはセラピーに向かないかもしれません。
Question5アニマル・セラピーに参加する動物はストレスを感じていないの?
Answer残念ながら、セラピー目的のためにイルカが狭いプールで飼われていることがあります。そんな環境にいるイルカはストレスが溜まっていると考えられます。ただ、人と一緒に過ごすことを喜びに感じる犬や、人と動物の歴史の中で、食べられるのを目的に飼われることがなかった猫や馬は、人と触れ合うことにストレスを感じていないと考えられます。犬、猫、馬は人間と特別な関係を築ける動物だと言えます。

Report 帝京科学大学と上野原市の取り組み目指すのは、地域にアニマル・セラピーを根付かせること。

認知症患者が増加していることを受け、山梨県上野原市はその対策のひとつとして、アニマル・セラピーを導入。
横山先生と、帝京科学大学の学生たちもそれに協力しています。地域が一体で行うセラピーの様子をご紹介します。

約1時間の中で見られた、多くの笑顔。

Report 帝京科学大学と上野原市の取り組み

「医療だけでは難しい。動物の力で、補うことはできないか?」。上野原市で、多くの認知症患者を診ている医師の呼びかけのもと、上野原市と帝京科学大学が協力、介護老人福祉施設でのアニマル・セラピーが導入されました。「市と大学が協力するアニマル・セラピーは画期的。現状は動物好きな医者が個人的に行うものが多いのですが、地域が一体となって行う今回の取り組みで、普及に期待ができます」と横山先生。

学生たちが動物を連れて施設を訪問。入居者たちは犬を膝に乗せたり、ボール遊びをしたり、約1時間、動物と触れ合います。驚いたのは、連れてきた動物の中に蚕(かいこ)や蛇がいること。

「上野原市はかつて養蚕が盛んでした。入居者の多くは、子どもの頃、家に蚕がいたはずです。また山深い所ですから、蛇もめずらしくありません。懐かしい記憶を呼び覚ますことは、認知症患者には刺激になるはず。アニマル・セラピーはその土地の文化を考えることも大事なんですよ」。
また、触れている動物ではなく、学生との会話に夢中になっている入居者の姿も意外でした。「動物と触れ合うことはもちろん、動物をきっかけにしたコミュニケーション、人と人とのつながりもとても大事なんです。入居者は、動物だけでなく学生に会えることを、とても楽しみにしているんですよ」。

犬を抱いて、それまで丸めていた背中をぴんと伸ばした人、子どもの頃のことをいきいきと話し続ける人……。約1時間のセラピーの中に、実に多くの笑顔を見たように感じます。
「アニマル・セラピーは続けることが重要。患者にとってそれが必要ですし、続けることでケースリポート(事例報告)も集まる。地域に根付かせ、普及させることを目的に、どうすれば円滑に進むか? 学生たちにもしっかり考えてもらいながら、取り組んでいます」。


この先生に聞きました!

横山章光先生

横山章光先生

よこやま あきみつ

帝京科学大学 アニマルサイエンス学科 准教授

1990年に産業医科大学を卒業し、その後共済立川病院のMPU(精神身体合併症治療病棟)に勤務。94年より6年間、同院でアニマル・セラピーにかかわる。大和市立病院、防衛医科大学校病院精神科などの勤務を経て、2005年、帝京科学大学 アニマルサイエンス学科講師に。06年より現職

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