加齢と認知症のものは忘れは違う!
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加齢と認知症のものは忘れは違う!
わかりにくいから、なかなか気付かない。
「認知症にはいくつかのタイプがあります。その中で最も知られているアルツハイマー型認知症の場合は、疑わしい状態が見られるようになって2、3年で発症すると言われています。しかしこれは、変化がはっきりと確認されてからの場合です」と朝田先生は言います。
歳を重ねていくにつれて誰にでも、もの忘れは出てきます。しかしそれが、加齢によるものなのか認知症の症状なのか、違いはどこにあるのでしょう? 「朝食を例にとってみましょう。メニューをど忘れして、あとから思い出すのは単なるもの忘れ。認知症の場合は、朝食を食べた行為そのものを忘れてしまいます。症状が進んでくると、このような違いがはっきりわかりますが、もの忘れは少しずつ出てきます。だから初期は気付きにくいのです」
認知症患者の家族を対象に実施された2013年の調査によると、認知症かも……と感じて最初に医療機関を受診するまでにかかった期間は平均で9.5か月、6割以上の人が1年近くかかったと答え、中には5年以上という人もいました。受診が遅れた理由を聞いてみると、一番多かった答えは、自分のもの忘れが認知症だと気付いていなかった、ということでした。違いがわからないことが、病気に気付かない原因にもなっていたのです。
気持ちが邪魔して早く受診できない!?
朝田先生によると、医療機関を受診することへの抵抗も大きな理由として挙げられるそうです。 「自分が認知症の疑いで受診するという事実を受け入れられないために、受診が遅れる人もいます。それでも重い腰を上げて受診した人の多くは『あなたは認知症ではありません』と医師に言ってほしくて来られるのですが、すでに受診までに時間が経っているため、残念ながらほとんどの方は、受診時点で認知症の疑いが強いというのが現実です」
加齢と区別できない、自分が認知症だと疑わないのは、細かな症状や潜伏期間があるなど、認知症を正しく知らないことが大きな理由です。診断の結果が単なるもの忘れなら心配ありませんが、認知症だった場合は、受診を迷っている間にも症状は少しずつ進行してしまいます。
長い潜伏期間こそ予防を始めるチャンス。
調査では、約3割の人が「認知症と確定された時期が遅すぎた」と答えました。そして、早期診断を本人や家族が望む理由として、「早く治療ができる」「いろいろ準備ができる」「今後の人生設計が立てやすくなる」などが挙がっています。この場合の「早く」とは、具体的にいつのことを指すのでしょう?
「最新の研究では、発症前に20年近い潜伏期間があることがわかっています」と朝田先生は言います。
つまり65歳で発症すると考えた場合、その始まりは45歳。最近では50代で認知症を発症する例も増えていますから、そうなると30代がすでに認知症へのスタートラインかも、ということになります。
30代や40代で自分が将来認知症に……とは想像しにくいものですが、ここが重要です。とにかく、この潜伏期間を見逃さないこと。下にあるセルフチェックを参考に、まずは自分のもの忘れの原因が加齢か、そうでないかを知りましょう。その上で、認知症を正しく理解すること。ここから、未来が変わってきます!!
"若年性認知症"が増加中。
認知症のうち、65歳以下で発症するものを若年性認知症と言います。症状は認知症と同じですが、平均の発症年齢が51歳、発症年代は18歳〜と幅広いのが特徴です。2009年に朝田先生が中心となって実施された「若年性認知症の実態と対応の基盤整備に関する研究」では、国内の患者数は約38000人でした。65歳以上の認知症患者に女性が多いことと比べ、若年性認知症は男性に多く見られることもわかりました。
働き盛りの年代が発症することによる社会的損失も問題視されていて、この若年性認知症も、発症数は増加傾向だと言われています。
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もの忘れセルフチェック
- □ 今やろうとしていたことを忘れる
- □ 外出がおっくうになってきた
- □ 物をしまった場所を忘れる
- □ 身だしなみへの関心が薄れてきた
- □ 同じ話を無意識に繰り返すことが増えた
- □ 理由もなく気持ちが沈むことがある
- □ 漢字を忘れることが多くなった
- □ 1回の食事で用意する料理の品数が減った
- □ 知っている人の名前が思い出せない
- □ 複数の作業を同時にできなくなった
- □ 説明書などを読むのが面倒になってきた
3つ以上あてはまる人は「認知症」の疑いが……