『オバジ』や『肌ラボ』、『50の恵』など、ロート製薬には、いくつかの化粧品ブランドがあります。今では"製薬会社の化粧品"は珍しくはありませんがそれを生み出すことは、大きな挑戦でした。ロート製薬が、化粧品作りに込めた想いとは?代表取締役会長兼CEO・山田邦雄がお伝えします。
製薬会社が、化粧品を作ること。
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製薬会社が、化粧品を作ること。
化粧品作りを決意したのは皮膚研究の信念から。
「製薬会社が化粧品を作る」。今ではそれほど違和感を持たれなくなったかもしれませんが、かつては「製薬会社が化粧品を作る?」と、疑問符がつくようなことでした。
皮膚薬を作っている製薬会社であれば、基本的な化粧品の製剤技術はあります。事業の延長線上で化粧品作りにチャレンジした会社は結構ありましたが、なかなか大きな成功というようなものはなく、いつの間にか消えてしまったブランドもたくさんありました。原因はいろいろ考えられます。大きな理由は、お客様が求めておられたものに応えられなかったことなのではないかと思います。その頃、化粧品に求められていたのは「夢のあるおしゃれな商品」であり、そういう感性的なものに応えることが、商品としても売り方としても、できなかったのではないかと思うのです。
しかし、次第にお客様の求めるものが変わってきました。「これまでの感性優先の商品だけでは、どうも物足りない」「自分に合ったものを自分の意思で選びたい」。そんなお客様のニーズが高まってきたのです。そうしていよいよ、ロート製薬も化粧品作りに挑戦する決意をしました。当時わが社は『メンソレータム』ブランドで、幅広いスキンケア商品を開発していました。この技術を活かせば、今までにない化粧品を作れるはずだ、と考えたのです。容易ではないことはわかっていましたが、ロート製薬には"本当の美しさは、健康の先にある"という皮膚研究の信念があった。だからこそ、その決断ができたのです。
新しいコーポレート・アイデンティティの発表記者会見。
左から代表取締役会長兼CEO山田邦雄、代表取締役社長兼COO吉野俊昭
肌を健康に、美しく。皮膚科医の考えを日本にも伝えたい!
そんなときに出会ったのが、米国で有名な皮膚科のドクターが開発した画期的な『オバジ』というブランドでした。これは、単に塗ってきれいになるという化粧品ではなく、肌の健康を考え美しい肌を作るという、まさに医薬品的発想の化粧品だったのです。さっそくロサンゼルスのオバジ先生を訪ね、日本にこの考え方を紹介したい! と直談判、プロジェクトをスタートさせました。しかし開発を進める中で、アメリカ仕様のままでは、日本のお客様に満足いただけないこともわかってきました。そこで、先生の考え方はそのままに、日本人の肌に合う処方を我々が開発するというユニークな形でやっていくことになりました(通常のこのようなブランド商品は、世界中で同じ処方のものを売っています)。
従来の化粧品とは根本から考え方の違う『オバジ』シリーズですが、特に、エイジングで衰えた肌悩みを持ち、化粧品で肌を整えることを真剣に求めるお客様から支持を得ることができました。今日では、ドクターズコスメ、機能性化粧品の代表ブランドとして認められるようにもなっています。
『オバジ』はドラッグストアでの販売が中心ですが、セルフで購買するスタイルのお客様であっても、スタッフが情報を伝え、簡単なカウンセリングも行うという方法が時代に合っていたように思います。
できないとは言わない。ないものを作る開拓者を目指して。
以降、もっと多くの方に広く使っていただけるような、身近な価格帯の『肌ラボ』や『50の恵』、そして百貨店などで丁寧なカウンセリングと共に最高級の商品をお届けする『エピステーム』など、多くの化粧品ブランドがそろっていきました。
実は、ロート製薬では今【再生医療】にも取り組み、従来の方法では治らなかった病気の治療に、ヒトの細胞を使うという研究をしています。『エピステーム』の新商品にはこの研究から得られた技術が応用されています。文字通り、皮膚の再生能力を引き出すような画期的な商品です。これからも最新の科学研究から得られた成果を、商品作りに活かしていきたいと思っています。
今年、ロート製薬では新しいコーポレート・アイデンティティ(CI)として、NEVER SAY NEVERを掲げました。「どんな困難に見えることでも、できないとは言わずチャレンジします!」という宣言でもあります。化粧品の分野も、当初は「そんな難しいことができるのだろうか」「門外漢のわれわれが本当に成功するのだろうか」という疑問や、とまどいは確かにありました。しかし、今までにないものであればこそ、チャレンジ精神を持った者がフロンティアを築けるんだ――という想いで、ここまで来られたように思います。これからも、社員全員で【NSN】の精神を発揮していきます!
- 家庭用皮膚薬として誕生し、120年以上の歴史を持つメンソレータム軟膏。ロートの化粧品作りの原点でもあります。
- ドラッグストアの『オバジ』コーナー。ロートの社員が手作り。
- コーポレート・アイデンティティ(CI)と、ロゴマークが新しくなりました