[今回の野菜] にんじん(茨城県 つくば市 手子生)
朝晩が冷え込むようになり、冬を間近に感じる頃「にんじん」の収穫ははじまります。にんじんは免疫力を高めるカロテンが豊富で、がんや動脈硬化の予防に役立つといわれる緑黄色野菜。そのにんじんを有機栽培でつくる茨城県つくば市手子生(てごまる)の畑を訪れました。
食べて健康!抗酸化力倍増!有機栽培のにんじん畑を訪ねて
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食べて健康!抗酸化力倍増!有機栽培のにんじん畑を訪ねて
健康野菜を届けたい!よろこばれる、にんじん農家の道へ
今回、訪れたつくば市は平坦な地形を利用した畑や田んぼの多い地域です。公園やゴルフ場などで使われる芝の産地としても有名。そのつくば市の手子生で有機栽培にこだわって、にんじんを育てている農業生産法人「オーガニックファーム つくばの風」の山本さんにお話を伺いました。もともと山本さんは、有機野菜の流通の仕事に携わっていましたが、健康に役立つ野菜を畑から直接届けたいという想いから、自らが野菜をつくる側になりました。「はじめは色々な野菜をつくっていましたが、にんじんが多くの人に喜ばれたことから、にんじんを主につくるようになりました」と、山本さん。
筑波山のふもと、絶好のロケーションで
にんじんの有機栽培に励む山本さん。
縁があって農業をはじめたこの土地を「歴史のある農地だから、もともと土が育っている」と、言います。ただ、風土が良いだけで、おいしいにんじんが育つわけではありません。山本さんのにんじんづくりには積み重ねてきた工夫があります。
手間がかかっても、困難でも、安全とおいしさには代えられない
「にんじんを育てる中で最も難しいのが発芽です」にんじんは初期生育が遅いため、発芽から初期生育の間、雑草は大敵です。その対策に山本さんは除草剤を使わず、「太陽熱消毒」を採用しています。太陽熱消毒とは、太陽熱マルチという透明のフィルムで土を覆い、太陽の熱で雑草の種を焼いて死滅させる消毒法。ただ、雑草は一度種を焼いても後からどんどん生えてきますので、太陽熱消毒の後も、数回の草取りが必要です。有栽培での、にんじんづくりには種を植えるまでの丁寧な下準備や大きく育つまでの草取りなど、手間暇のかかる作業がたくさんあります。それでも、山本さんが有機栽培にこだわるのは、安心・安全、そして、おいしいにんじんが育つからだといいます。一般的に有機栽培の野菜はおいしいといわれますが、なかでもにんじんは味の違いが顕著に現れるといいます。
太陽熱消毒を実施中の畑。太陽の熱で雑草の種を死滅させます。
農業は楽しい!つくる人も、食べる人も変えていく
「育てたにんじんをおいしいと言ってもらえる瞬間は、何ごとにも代えがたい喜びがある」と、山本さんは言います。有機栽培で育てられたにんじんはプロの料理人に包丁が入りやすいと褒められたことも。2015年に生産したにんじんの成分分析では通常の約3倍の抗酸化力があることがわかりました。※「ずっと食に関わる仕事をしてきましたが、自然の中で働ける今が一番充実しているし、身体も元気になっていると思う」と、山本さんは農業の仕事について語ります。にんじんの種まきは絶え間なく汗が流れるような夏の炎天下で行われます。ですが、その厳しい環境での畑仕事の後に食べる自家栽培のスイカは、たまらなくおいしいそうです。食べる人の健康に役立つだけでなく、つくる人が自然の中でいきいきと働ける。農業という仕事は、実はとても恵まれた仕事なのかもしれません。
※ニンジン成分分析機関:デザイナーフーズ株式会社
にんじんと人を育てて、農業を未来につなぐ
山本さんの農場では「筑波学生農業ヘルパー」の紹介から学生アルバイトの受け入れを行っています。学生は畑仕事を手伝いながら大学だけでは学べない、実践の農業を学ぶことができます。アルバイトに来た学生は創意工夫を重ねる農業のやりがいや面白さに気付いて、就農することも多いといいます。「おいしく健康に役立つ野菜を多くの人に知ってほしい。その野菜を育てる有機の畑を広げたくて、ずっと続けてきました」と、山本さん。農家は全国的に減少傾向にあるなか、この地域では筑波の学生をはじめとした新規就農者が増えてきているといいます。山本さんの想いは一歩一歩、実現へと向かっています。