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ふふふなコラム

バイオリニスト 吉田恭子さんに聞く。クラシックの楽しみ方

掲載号 vol.9

Vol.3

記事内容

  • バイオリニスト・吉田恭子さん

読了時間:5分

バイオリニスト・吉田恭子さん

楽しさを伝えてクラシックへの入口を広げたい。

01年にCDデビューし、国内外で精力的に活動。その豊かな表現力で人々を魅了する吉田恭子さん。子ども向けの体感型コンサート、映像や香りと音楽を融合させたコンサートなど、多彩な演奏活動が注目されています。そのユニークな発想や、行動力の源は、一体どんなものなのでしょうか。
クラシックに興味はあるのですが何から聴けばいいのかわからなくて……。
「そうおっしゃる方が多いので、私は演奏会で音楽家のことや、曲が生まれた背景などをお話しします。例えば、ベートーベンは聴力を失って自殺まで考えましたが、遺書を書くうちに作曲への情熱を再認識しました。そして、かの有名な『運命』や『交響曲第9番』を作曲したんですよ」
なるほど、名曲が生まれた背景を知ると、ぐっと興味がわいてきますね。
「クラシックは敷居が高いと思われがちですが、決してそうではありません。要はきっかけなのです。おもしろいと感じてもらえるよう、私は映像と音楽を融合させた演奏会なども開いています」
全国の学校を巡る「ふれあいコンサート」も子どもたちにとってクラシックと出合うきっかけですね。
「音楽とは文字通り、音を楽しむもの。まず楽しみ、好きになるきっかけを作りたいんです。コンサートを聴いた子どもたちから『感動した』『自分も何かをがんばりたい』というお手紙をもらうことも多いんですよ。美しい音楽に触れることは想像力を広げ、感動体験は豊かな心を育むのですね」
それは大人も同じですね。感性を磨くために、私自身も真の美しさに触れる機会を大事にしています。
「すぐに変化がなくても蓄積され、きっと人生を広げてくれますよ」

芸術・文化を育てる地道な活動は豊かな未来のために。

お話を聞いているとクラシックのコンサートに行きたくなりました。
「それは、ぜひ。本当の感動は生の美しい音に触れてこそ、です。演奏会は、その時一度しかない瞬間芸術。演奏者とお客さまが一緒に作り上げるものです。CDでも音楽を聴くことはできますが、それはサプリメントで栄養を摂るようなもの。私は演奏会を通して、手作りの、ぬくもりある“料理”で心に栄養を与えるような機会をたくさん届けたいと思っているんです」
演奏会は、その瞬間にしか見られない“奇跡”のようなものですね。
「忙しい時代だからこそ誰もが豊かな心を持ち、情報過多な中で大切なものを選ぶ感覚を養ってほしいと思います。そのために音楽やさまざまな芸術=豊かな文化にふれることが大事だと考えています。文化【culture】は栽培【cultivate】が語源になっていて、つまり文化は、耕して種を植えて育てるものだと言えます。すぐに結果は出なくても、文化が根付くお手伝いとして日本中に音楽の素晴らしさを伝えていきたいと思います」

取材を終えて

美しい音楽による感動体験が想像力を育て、心を豊かにする……。まさに吉田さんのお人柄や姿勢がそれを証明していると思いました。ハードルが高いと感じていたクラシックですが、まずは体験してみてこそ。そうしてさまざまな文化に触れ、感性を養い、人生を豊かなものにできればと思います。
岡野亜矢子

バイオリニスト 吉田恭子さん

よしだ きょうこ 音楽好きの祖母のすすめで、2歳からバイオリンを始める。
桐朋学園大学卒業後、英国、米国へ留学。巨匠アーロン・ロザンドに師事。音楽を通して子どもの感性育成、障害者支援、エコロジー活動にも取り組む。音楽家を目指す青少年を対象に、一流の演奏家の指導によって技術と感性を磨くプログラム「YEKアンサンブル・アカデミー」の実行委員長を務める。http://www.kyokoyoshida.com/

卓越した技術と豊かな表現力でファンを魅了する吉田さん。
「YEKアンサンブル・アカデミー」を発足させるなど若い音楽家の育成にも意欲的です。
愛用のバイオリンは270年前のイタリア生まれ。
ケースには師のアーロン・ロザンドさんの写真や芸能神社のお守りなどが入れられています。

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