ZAPATEO野田満里子さんが語る、心を動かす靴作り

シューズクリエイター 野田満里子さん

「靴って自分で作れるの？」 その驚きが人生の転機に。

大小の木型、色とりどりの革、さまざまな工具が所狭しと並ぶ、靴工房『ZAPATEO（サパテオ）』。シューズクリエーターの野田満里子さんはこの工房で、お客さまの足に合う、世界で一足の靴を作り上げていきます。

「メキシコで生まれ、8歳まで現地で過ごしたので、家の中でも靴を履く生活でした。母から聞いた話では、私は幼い頃から靴へのこだわりが強く、特にショートブーツがお気に入りだったそうです」

日本に移り、大学卒業後は大手企業に就職した野田さん。ある日、職場の先輩が履いている靴があまりに素敵だったことから、どこで購入したのかを尋ねると、「教室に通って自分で作った」との返事。「靴って自分で作ることができるんだ！」と驚いた野田さんは、早速その先輩が通う教室に飛び込んだのだそうです。

「一足目に作ったのは、もちろんショートブーツ。でも出来上がった靴はサイズが合わなくて……。イメージ通りでなかった分、『もっと上手になりたい』『ほかのデザインにも挑戦したい！』と、靴作りにのめり込んでいきました」

メキシコへの帰郷で自分の想いを再認識。

その後、野田さんは靴作りの技術を磨き、2001年に靴工房『ＺＡＰＡＴＥＯ』を立ち上げました。「ＺＡＰＡＴＥＯ」とは、スペイン語で「靴音・ステップ」という意味だそう。

「『靴を履くことで、ステップを踏みたくなるほど明るい気持ちになってほしい』という想いを込めました。靴作りは、機能性や耐久性を追求することも必要ですが、デザインや色違いなど感覚で作り上げる部分も大切。とても奥が深いんです。この仕事を始めて気づいたのは、多くの人が、足に合わない靴を履いているということ。それでは、出かけるのもおっくうになりがち。足に合った靴を履くことで、お客さまの足どりが軽くなればと願っています」

独立して約3年経った頃、そんな野田さんの心に、迷いが生まれます。

「納得のいくような靴作りができないことが続き、自分自身を見失っていました。私が本当に作りたい靴ってどんなもの？　それを見つけるために、思い切ってメキシコに帰りました」

そこで目にした開放的な雰囲気や、陽気な人々との何気ない会話が、野田さんを解き放ってくれたのだとか。

「『靴作りとはこうあるべき』と、決めつけず、『ZAPATEO』というブランド名に込めた想いに立ち返ることの大切さに気づきました。オーダーメイドの靴は高額なので、オーソドックスな色が好まれます。でも、カラフルな色の靴を履く楽しみも知ってもらいたくて、色とりどりの靴をサンプルとしてそろえました。そうすると『色遣いが素敵』と褒められることが多くなって。そんな風に靴作りに想いを反映させることで、人の心を動かすことができるのだと実感しました」

靴作りに遊び心をとり入れ、さらなる輝きを放つ野田さん。心を込めて作る靴は、履く人の足取りを軽やかにし、気持ちも明るくしてくれるのです。

野田 満里子さん

のだ まりこ●メキシコ生まれ。大学では工業デザインを学び、大手フィルムメーカーのプロダクトデザイナーを経て、30歳のときに靴工房『ZAPATEO』を立ち上げる

(左)足の採寸、革の裁断、縫製などを行う『ZAPATEO』の工房で
(右)革や靴底色、アップリケ、刺繍などで遊び心をとり入れ、後ろ姿も個性的に

『ZAPATEO（サパテオ）』

東京都・浅草にある、オーダーメイドの靴工房。ベビー靴や、革小物などの制作も行う。
http://www.zapateo.com/