おならの変化でわかる病気、ガマンすると、起こる病気
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おならの変化でわかる病気、ガマンすると、起こる病気
におい研究でわかったある病気との関係
かせ「においのほか、回数や音の大きさで『私、大丈夫なのかな』と思う人は多いようです。インターネットで“おなら”を検索しようとすると、“多い原因”や“止まらない”といった検索候補が出てきます。それだけ、多くの人が自分のおならを心配しているんだなと思います」
先生「そうですね。悩んでいる人は、本当に悩んでいますね。私の外来にも、おならの悩みを抱えた方が来られます」
かせ「おならの変化を感じると、身体の中も何か異変が起きているのかも、と気になります」
先生「先ほどお話しした、レビット博士のにおいの研究によって、硫化水素など硫化系のガスと、潰瘍性大腸炎という病気との関連がわかったんですよ。潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にただれや潰瘍ができる病気で、病状が悪化する時期と、落ち着いている時期を繰り返す特徴があります。その患者さんが自分の便のにおいが強いと言うので、ではおならのにおいは?と調べていくと、病状が悪化したときに、おならのにおいが強くなるとわかったんです」
かせ「ということは、においが強くなったら、潰瘍性大腸炎の可能性があるということですか?」
先生「そうとは限りません。潰瘍性大腸炎の患者さんの症状とおならのにおいの強さが関係しているということなんです。ちなみに潰瘍性大腸炎の罹患率は、日本の人口に対して0.1%程度。それに下痢や腹痛、血便といった症状が現れますから、おならよりもこれらの症状があるかどうかが手がかりになるでしょう」
かせ「では、大腸がんとの関連はどうでしょうか? おならの変化で大腸がんかも? と心配している人が多いようです」
先生「今のところ、関連はわかっていません」
かせ「なるほど。では、病気までいかなくても、においが強くなったら腸の中で炎症が起きているということはありますか?」
先生「断言はできません。わかっていないことは多くあります」
かせ「尿を調べればいろいろわかりますよね。おならも同様に身体から出てくるものですから、身体の状態がわかるのではないかと思っていました」
先生「おならの研究が進めばわかるようになるかもしれませんが、今のところはわからないですね。かせちゃんが考えているように、“健康のバロメーター”としておならを活用することは、まだ難しいと言えます」
ガマンすると大腸憩室炎(だいちょうけいしつえん)になる!?
かせ「では、おならをガマンすることによって病気になる、ということはありますか? ガマンすると具合が悪くなる、という声をよく聞きます」
先生「腸が張ってきますから、ツラいですよね。私もガマンするとお腹が痛くなります」
かせ「ガマンすることで大腸憩室炎になる可能性があると聞いたことがあるんですが……」
先生「大腸憩室炎は、腸管の外側に向かって、風船のような膨らみ(憩室)ができて、その中で炎症を起こすこともあるというものなんですけど、実は憩室ができる原因は未だにわかっていないんです。風船のようにポコッと膨らむので、腸の中で圧が高まるとできるのではないか、とも言われています。食物繊維が不足するとできやすいということがわかってきているので、それによって便秘気味になり、ガスが溜まって憩室ができるのではないかと考えられていますが、これもまだ研究段階なので、確実ではありません。ガマンすると何かの病気になる、ということはわかっていないんですよ」
かせ「そうなんですね。ちなみに、ガマンしたおならはどこへ行くんですか?」
先生「お腹の張りを防ぐためには、おならは出したほうがいいですが、ガマンすることで病気になることはないと考えています。おならは、必ず外へ出ます。お尻の穴は、そんなに強く締まってないんですよ。ガマンしていても、気づかないうちに必ず出ています」