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知っトク!?健康スキル

モヤモヤをスッキリ。共感疲労を防ぐ。感情の整え方【内受容感覚】(4/4)

掲載号 vol.55

意識するだけで変わる!感情の整え方

自律神経を整えられる唯一のものは、呼吸

感情と共感力、そして健康維持にも関係する内受容感覚。鈍い人も、鋭過ぎる人も自分の身体の変化と向き合うことが大切です。

「屋外の車の音が気になったり、他者が使う食器の音が気になるなど、自分の内側でなく外側に注意が向きやすい人は、内受容感覚が鈍い状態かもしれません。また、自分は不安が強いな、と感じている人は、内受容感覚が鋭い状態かもしれません。どちらも、呼吸に意識を向けるとちょうどよいバランスに整えられると言えます。内受容感覚が鈍い場合は、自分の内面に向き合えるようになり、鋭過ぎる場合は、自律神経をリラックス状態に導くことができます。自律神経はほぼ自分でコントロールできないものです。今から心拍を速めよう、発汗しようと思ってもできませんよね。ただ、呼吸だけは自律神経のコントロールができるのです」

ヨガやマインドフルネス、瞑想などは呼吸に意識を向けられるもの。それ以外には、シンプルに深呼吸をしてみるだけでもよいそうです。

心配ごと、困りごとがあるときは、感情を“内側に溜め込まない”ようにしてみましょう。

呼吸を意識する

自分の感情を人に話すのも効果があります。溜め込まないことはやはり大切。話す相手は家族や友だちという親しい関係にある人だけでなく、AIでもいいと言われています。相手がいかに親身に話を聞いてくれるかではなく、ただ話す、感情を外へ吐き出すのが重要なのです」

内側に溜め込まない

さらに、涙を流すのもよいそうです。

「悲しみや喜びなど感情によって流れる涙には、エンケファリンというリラックス効果のあるホルモンが含まれています。感動的な映画やドラマを見たときに流れる涙にも、リラックス効果はあります。ただ、玉ねぎを刻んだときなど、反射的に出る涙にはそれがありません。感情を伴う涙にのみ効果があるのです」

涙を流す

共感のスイッチをオフ。その具体的な方法は

共感力が高過ぎる人も、対処する方法があります。

「先ほどお話しした3つの共感の話を思い出してください。その3つは、使いわけられるものです。例えば戦争のニュースは確かにつらいものではありますが、単に見なければいいわけではありません。その事実に、目を背けてはいけないものでもあります。ですから、【経験を共有する】という部分だけをオフにする。ほかの【相手の視点に立って考える】【同情や配慮を示す】をオンにする。苦しみや痛みに同調せずに、戦地にいる人のために、自分は何ができるか、といったことを考えるのが大事なのです。簡単ではないかもしれませんが、共感のスイッチをオフにもできると知っておくだけでも、共感疲労の予防につながっていきます」

必要な共感を理解する

感情は自分では何ともできないもの、だと思っていませんでしたか?どこで、どのように生まれるものなのか、その正体がわかれば、上手くつきあっていけるものなのです。

内受容感覚の鈍さ、鋭さは個性です。どちらであっても、自分を否定する必要はありません。大切なのは知識を持つことです。そうすればどう行動すべきか、そして、どうすれば解決するのか、その糸口を見つけられるからです。なぜこんなことになってしまうのかと悩んでいたものが、原因がわかってほっとした、ということはありますよね?ここで紹介したことは、今日からやって明日すぐに効果が出るわけではありませんが、知識を持っていれば、そのとき、そのときでどう対応すればいいかがわかるはずです。それだけで、十分効果があると思います」

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梅田 聡 先生

梅田 聡 先生

うめだ さとし

慶應義塾大学
文学部心理学専攻 教授

1998年、慶應義塾大学 大学院社会学研究科心理学専攻博士課程修了。日本学術振興会  特別研究員、慶應義塾大学 文学部人文社会学科 助教授などを経て、2014年より現職。20年より慶應義塾大学 医学部精神・神経科学教室兼担教授。共著に『共感』(岩波書店)、監修書籍に『感情』(岩波書店)などがある

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