健康のために光を感じることが必要です。そう聞いても、きっとピンとこないでしょう。でも光を感じることには、だるさや眠気の改善のほか、さまざまな効果があるとわかってきているのです。目は、その光を受け取る器官のひとつ。目を大切にする理由には、それもあるのです。
だるさや、眠気の改善にも!身体を整える “感じる光”
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だるさや、眠気の改善にも!身体を整える “感じる光”
だるさや眠気は光の不足が原因!?
近年増加した、在宅勤務を含むテレワーク。コロナ禍で働き方は大きく変化し、今年に入り規制が緩和されてからも、テレワークを継続している企業もあります。それは、満員電車に乗るストレスを減らせるなど、メリットが多くあるから。ただ、デメリットがないわけではありません。この特集の発案者である編集メンバーは、長く続く在宅勤務で、日中に眠気やだるさなどを感じるようになったそう。就寝・起床時間の変化など、生活リズムの変化によるものだと片付けていたそうですが、調べていくとその不調は“光のとり入れ方”に原因があるかもしれない、ということに行き当たったのだとか。そうして、慶應義塾大学 准教授で、眼科専門医の栗原俊英先生にお話をうかがうことに。光を感じる役割がある、目の網膜の研究を続けている先生です。
「在宅勤務では、光のとり入れ方が不十分になると言えます。それで起こることのひとつが、“体内時計の乱れ”です。『朝起きたらカーテンを開けて光を浴びましょう』と聞いたことがありませんか?それは朝の光が、体内時計のズレをリセットするために必要なものだからです。地球に生きるものはすべて、地球の自転に沿ったリズムを持っていて、ヒトは25時間のリズムだとされています。地球の自転とは、約1時間のズレがあるわけです。それを修正しないことには、海外旅行をしたときに現れる時差ぼけのような状態になってしまうのです」
身体が活動を始めるのも朝の光がきっかけに
朝の光は、体内時計をリセットするだけでなく、身体が活動を始めるためのサインにもなります。
「体内時計には、脳にある親時計と、身体のさまざまな臓器にある子時計があります。脳の親時計が朝の光を受けると、身体中の子時計に働き始めるように指令を出します。そうして血液や体温、代謝などのコントロールが開始されます。メラトニンの分泌が止まるのもそのひとつ。メラトニンは眠りを誘うホルモンで、分泌が止まることで目が覚めるわけです。また、分泌が止まってから14~16時間後に、親時計からの指令を受けて分泌が再開。徐々に分泌が高まって2~3時間後にピークになり、眠気が訪れるようになります。例えば6時に起きると、23時に眠くなるということ。光を浴びる時間が遅くなると就寝時間も遅くなり、朝起きられないという悪循環にも陥ってしまいます。だるさや眠気は、朝の光をきちんととり入れられなかったことが原因のひとつだと考えられます」
コロナ禍で起こった不調は、生活リズムの変化によるものですが、その根底にあるのは光のとり入れ方の変化だと言えるかもしれません。さらに、光には健康につながるさまざまな効果があることもわかってきました。