もしウイルスに感染してしまっても、感染を拡げない様に感染した細胞を攻撃する力が大事!ビタミンB1はその力を維持するために欠かせないのです。
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ブロックできなくても攻撃力で身体を守る!
今年は、例年以上にインフルエンザワクチンの接種が大切だと言われています。が、接種することができなかったという人もいるかもしれません。そんな人にも、ビタミンB1が助けになります。抗体が作られるチャンスを得られなくても、ウイルスに感染した細胞を攻撃する力で、症状の重篤化を防ぐことができるかもしれません。
「特にウイルス性の感染症に、T細胞の働きはとても重要です。ウイルスは細胞の中に入り込むと新しいウイルスがどんどん増えて、次々に細胞が感染していきます。抗体でブロックできなかった場合、感染を拡げないためにT細胞の力が必要。ウイルスに感染した細胞をT細胞が見つけ出し、細胞ごと破壊してウイルスを撃退していきます(左ページ上の図を参照)。それによって、ウイルス性の感染症による重篤化リスクを下げることができるのです」
自ら攻撃もする【T細胞】
T細胞は、B細胞に「抗体を作れ」という指令を出すだけでなく、自ら病原体を攻撃することもできます。ウイルスが細胞に入り込むと、次々に感染が広がるため、T細胞が感染した細胞ごと攻撃します。
“エリート養成機関”の弱体化も防ぐ!
ビタミンB1は、パイエル板など免疫細胞の学習の場の弱体化を防ぐだけでなく、もうひとつ、【胸腺】という“T細胞の育成場所”の弱体化も防いでいます。
「免疫細胞は骨髄で作られ(後日公開の記事で詳しく紹介)、腸に移ってパイエル板で学習しますが、T細胞は、パイエル板に移る前に、胸腺でも育成教育を受けます。胸腺は心臓の上にかぶさるようにしてある臓器。T細胞にとっては、エリート養成機関とも言える場所で、敵の見極め方や攻撃法など、強力な力を持つためにここで教育を受けるわけです。胸腺での厳しい訓練によって、脱落するT細胞は実に約95%。強力な力を持った“選ばれし約5%”のT細胞だけが、パイエル板に移ります。全身で免疫細胞たちが力を発揮するためにも、パイエル板同様、胸腺の働きも必要なのです」
胸腺は、加齢とともに小さくなっていきますが、ビタミンB1が不足すると、若い人でも小さくなってしまう危険性があります。
「胸腺は、10代前半で最大の大きさになり、40歳頃には最大時の約50%に、70歳頃には約10%にまで小さくなっていきます。高齢になると免疫力が低下するのは、胸腺の萎縮も関係していると考えられます(下のグラフを参照)。ただ、胸腺は、加齢だけでなく、ビタミンB1不足によっても萎縮します。ですから、若い方であっても注意が必要なのです」
ビタミンB1は、免疫力を維持するために必要なもの。感染させないよう抗体を作る、感染しても、敵を攻撃する。そのふたつの力を維持するために大切なものなのです。ヨーグルトをはじめとする発酵食品など“身体にいい”と言われるものを摂ることは大事ですが、それだけでは不十分。栄養素がひとつ欠けてしまうだけで身体に変化が表れることもあるのです。
胸腺の萎縮で、免疫力も低下
胸腺は10代をピークに、次第に委縮していきます。70歳頃に、その大きさは最大時の約10%に。高齢になると免疫力も低下するのは、胸腺の大きさも関係しています。