髪型も薄毛の原因に!? | 度重なるダメージに要注意!
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髪型も薄毛の原因に!? | 度重なるダメージに要注意!
重なるダメージで幹細胞がなくなる!?
ホルモンの関係に加えて、細くて柔らかいといった、生まれつきの髪の質など、考えられる原因がさまざまにある女性の薄毛。そこには、幹細胞特集でお伝えした幹細胞も関係しています。
「毛髪のもとになる幹細胞は、かつては、毛母細胞に存在すると思われていましたが、1990年、それより上にあるちょっと膨らんだ部分、バルジと呼ばれる立毛筋がつく部分の中に存在することがわかりました(下の図を参照)。
毛周期の休止期になると毛包がだんだん短くなり、毛乳頭とバルジの距離が最も近づきます。そこでバルジと毛乳頭がシグナルを送り合った結果、幹細胞が生み出した、次の世代を支える細胞が毛母細胞に送り込まれて、次の成長期の毛髪が作られるわけです」
バルジには、さまざまな幹細胞が存在。毛髪のもとになる毛包幹細胞のほか、毛髪に色をつける色素幹細胞もあります。
「それぞれの幹細胞が、実際に働く細胞を生み出すことで、硬く太く黒い毛髪が作られます。毛包幹細胞は、餌のようなものを与えて、色素幹細胞がなくならないようにもしています。その餌のようなものを届けられなくなると、白髪になることもわかっています」
バルジの中にいる幹細胞が傷ついたり、なくなることで薄毛も白髪も起こってしまうのです。
「例えば、毛髪を抜くのをやめられなくなる【抜毛症】という疾患があります。その疾患を持つ人は、生えてくる髪がとても細い。髪を大量に抜くことで毛周期を早めていると考えられ、そのために毛包幹細胞がたくさん使われている可能性があるのです。また、【牽引性脱毛症】というものもあります。日本髪を結う舞妓や芸妓、バレエダンサーなど、きつく引っ張って結い上げるヘアスタイルを日常的にしている人は、ひどい場合、生え際の毛髪が生えなくなることもあります。引っ張られることが負担になって毛包幹細胞がなくなってしまっていると考えられます。抜く、引っ張るなど、繰り返しダメージを受けることでも、薄毛になってしまうのです」
毛髪を作るはずが皮膚を作る細胞に!
年齢を重ねて起こる薄毛にも、幹細胞が関係していることがわかっています。
「東京医科歯科大学の西村栄美教授の研究で、毛髪を作る細胞を生み出すはずの毛包幹細胞が、加齢に伴い皮膚の細胞になってしまうことがわかりました(*)」
特集1でお伝えしたように、幹細胞は自分と同じ細胞を作る能力(自己複製能)と、自分とは違う細胞になる能力(多分化能)があります。毛包幹細胞は、皮膚にも運命を変えられるのです。
「毛包幹細胞は通常、毛髪を作っているのですが、年齢を重ねると、どうしても皮膚になりたがってしまうようです。加齢に伴って、毛包幹細胞をつなぎ留めるのに重要なコラーゲンの一種が減少してしまうのが理由です。そして毛包幹細胞は、毛髪を作る細胞の代わりに皮膚を作る細胞に運命を変え、やがてフケや垢となって脱落。それによって毛包がミニチュア化して、生えてくる毛が細くなっていくのです」
幹細胞は、生まれたときに持っているものから増えることはありません。髪が生え変わるごとに使われるので、やがては失われてしまいます。年齢を重ねることで起こる薄毛は、とても自然なことだと言えそうです。
*火傷など皮膚の損傷時にも、毛包幹細胞が皮膚の細胞になることがわかっています