大腸がんを予防する。それがすべてのがん予防にも!
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大腸がんを予防する。それがすべてのがん予防にも!
普段からできる大腸がんの予防は、バランスのよい食事と適度な運動。ごく当たり前のことのようですが、それは何も"悪いことは徹底してやめる"ということではないそうです。少し意外とも思えるお話を笹月先生からお聞きすることができました。
バランスよく、とは極端にならないこと。
大腸がん予防のためには“バランスのよい食事と適度な運動”。ごく当たり前に言われてきたその言葉は、【悪いことは徹底してやめなければならない】という意味に捉えられるかもしれません。笹月先生も「バランスよく、とは便利でよく使ってしまう」とのことでしたが、本当に伝えたいのは【極端な考えがよくない】ということなのだそうです。
「例えば、昨年WHOが、加工肉や赤肉(牛肉・豚肉など身が赤い肉)の摂取が大腸がんのリスクを高めると発表しました。私たちのところにも問い合わせが数多く寄せられましたから、多くの方が心配されたと思います。世界中の論文を集めて評価した、米国がん研究機構のデータでは、確かに大腸(結腸・直腸)がんの【リスク増加が確定的】と、かなり強い判定となっています。ただ、日本人においてはどうか? というと【可能性あり】で、これは【確実】【ほぼ確実】に次ぐ3番目の評価です(左上の表参照)。赤肉・加工肉と大腸がんのリスク上昇は、日本人はそこまで関係が一致していません。摂取量が多過ぎるとリスクは上昇しますが、絶対に摂ってはいけないわけではないのです」
アルコールも大腸がんのリスク上昇は【確実】ですが、これも少しも飲んではならないということではないそうです。
「循環器の病気などで見ると、お酒は1~2合くらい飲む人のほうが一番リスクが低いんです。少しならむしろよい。ですから禁酒より節酒のほうがいいと考えられます」
肥満も大腸がんのリスクにおいては上昇が【ほぼ確実】ですが、全体的な健康リスクにおいては、痩せ過ぎも問題なのだそうです。バランスよく、とは悪いことを一切やめるのではなく、極端にならないようにということなのです。
ひとつだけでなく複数のがん予防に!
がんの原因はさまざまにあり、それが複合的に絡んで発症すると考えられています。風邪の原因が風邪ウイルス、結核の原因は結核菌といったように病気と原因が一対一の関係ではないと笹月先生。
「多くの場合、自分が将来どのがんに罹るか、決まっているわけではありません。喫煙は大腸がんにおいてリスク上昇は【可能性あり】という判定ですが、やはりやめるべきです。タバコには発がん性物質が多く含まれていて、リスク上昇が【確実】のがんはたくさんあります。喫煙の習慣がある人は禁煙をする。それが大腸がんだけでなく、ほかのがんの予防にもつながっていきます」
禁煙する、節酒する、食生活を見直す、身体を動かす、体重を管理する。この5つの健康習慣を実践するだけでがんになるリスクは低下するというデータもあります(下の表参照)。
「0~1個を実践している人を基準にした場合、実践している数が増えるほどがんになるリスクは低下します。5つをすべて実践した場合、男性で約43%、女性で約37%リスクが低下します」
ストレスにならない範囲で、とり入れやすいものから実践すれば、ひとつのがんだけでなく、複数のがん、そしてさまざまな病気の予防にもなるのです。