これも死亡率増加の原因に。検診受診者、半数以下という実情。
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これも死亡率増加の原因に。検診受診者、半数以下という実情。
市区町村や職場で行われているがん検診。きちんと受診をしていますか?がんは気づかないうちに進行していく病気。特に大腸がんは、症状が出てもわかりにくいものです。しかし、検診の受診率はとても低いのが実情。死亡率増加の原因にもなっています。
症状が出ても気づきにくい病気。
大腸がんをはじめ、罹患率・死亡率が高いがんを対象に、市区町村が検診を行っています。また、定期健康診断と併せてがん検診を行っている企業も多くあります。市区町村が実施する検診は、無料あるいは一部負担で受けられるものですが、それでも受診する人が少ないのだそうです。
「1992年から大腸がん検診が始まったこともあって、1995年くらいから死亡率が少し下がりました。しかし最近は増加しています。これには、多くの人が大腸がん検診を受けていないことが関係していると考えられます」と松田先生。
厚生労働省が発表した「平成25年国民生活基礎調査」によると、40~69歳の受診率は、男性が41.4%、女性が34.5%。しかし松田先生によると、実際にはもっと少ないという実感があるようです。
「病院でいろいろ検査をする中で、それが何の検査だったのかわからなくなっている人も多いようです。おそらく、実際の大腸がん検診の受診率は20%くらいではないかと思います」
がんは、気づかないうちに進行していく病気。特に大腸がんは痛みなど症状が出にくいことに加えて、ある程度進行して出血があっても便中に混ざってしまい、異常に気づきにくいのだそうです。
「昨年から、伊豆大島に住む40~79歳の方4645人を対象に、大腸がんと生活習慣などの要因との関係を調査する研究を行っています。当研究はスタートしたばかりですが、進行大腸がんがすでに発見されています。その方々は、痛みなどはなかったようですが、よく聞いてみると出血には気づいていたそうです。ただ、それを痔だと思い込み、放置してしまったということでした」
50歳以上で罹る割合が高くなりますが、10年以上かかってがんになる大腸ポリープもあります。40歳から受診を考えるといいでしょう。
大腸ポリープががんになるのには時間がかかりますから、大腸内視鏡検査で切除しておけば、毎年受診することはないと言えます。
"がんの芽"となる大腸ポリープを切除できるのが大きなメリットです。拡大内視鏡を有する病院のドクターは経験豊富である可能性が高いので、病院選びのひとつの基準として考えていいかと思います。
大腸内視鏡検査は効果的な予防にも!
一般的な大腸がん検診は、便に潜む血液の有無を調べる便潜血検査という方法で行われます。2日分の便の採取が必要なことから、便秘がちな女性にとっては受診が難しい場合もあります。
「便潜血検査の受診が難しい場合は、大腸内視鏡検査の受診をおすすめします。大腸を内視鏡で観察する方法で、がんや大腸ポリープを高い確率で発見できるものです。大腸ポリープのすべてががん化するわけではありませんが、中には腺腫というがんになる可能性を持つものもあります。大腸内視鏡検査には、小さな大腸ポリープも含めて、“がんの芽”を切除できるという大きなメリットもあるのです」
大腸内視鏡検査は、がんかどうかを調べるだけでなく、効果的な予防になるのです。しかも、毎年の受診でなくてもいいそうです。
「一度受診して、翌年にもう一度。2回受診すれば、その次は3~5年後でよいと考えられます」
大腸がん検診の受診率が低い理由は「自分は大丈夫」という思いがあるからではないかと松田先生。
「がんになると治療にお金も時間もかかります。[大丈夫]だと思わずに検診を受診すれば、がんで辛い思いをする未来を回避することにつながります」
がん死亡率の低下を目的に、市区町村が、大腸がん・胃がん・肺がん・乳がん(対象40歳以上)、子宮頸がん(対象20歳以上)の検診を行っています。公的な予防対策として実施されるもので、費用は無料または少額の負担で受診できます。がん検診を受けていない人は、実施期間や予約方法など、住んでいる市区町村に問い合わせてみましょう。