昨年、女性タレントの告白をきっかけに、関心が高まった乳がん。治療によって、髪や乳房を失うかもしれないという怖さから検診を受ける人が増加したようです。乳がんは、女性の罹患率1位。予防を心がけるのはとても大切なこと。でも、心配なのはそれだけではありません。女性のがんの死亡率1位は、大腸がん。乳がん同様に、気をつけなくてはいけないものなのです。
忘れちゃいけない、大腸がん。
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松田尚久 先生
まつだ たかひさ
国立がん研究センター
中央病院 検診センター長
1994年、山形大学医学部卒業。1998年、国立がん研究センター 中央病院入局、2016年より、同センター 中央病院 検診センター長に。03年開始の厚労省がん臨床研究、ジャパンポリープスタディの代表を務める
笹月静 先生
ささづき しずか
国立がん研究センター
社会と健康研究センター
予防研究部部長
2000年、九州大学大学院医学系研究科 予防分野博士課程修了。同年、国立がんセンター研究所支所入局。13年より、同センター がん予防・検診研究センター(現・社会と健康研究センター) 予防研究部部長に。がんの予防や、評価に対する研究が専門
忘れちゃいけない、大腸がん。
罹患率1位は乳がん、死亡率1位は大腸がん。
女性にとって心配な病気はいろいろ。中でも乳がんは、特に「なりたくない病気」のひとつに挙げられるのではないでしょうか。昨年秋、女性タレントが乳がんであることを告白。ブログに、治療によって乳房や髪を失う辛さなどが綴られていることも、報道番組などで伝えられました。「女性として他人事ではない」と、乳がん検診を受ける女性が増えたそうです。
乳がんに関心を持ち、検診を受けるなどの対策はとても大切。ただ、それだけを気をつければいいというわけではありません。国立がん研究センターのデータによると、女性が罹患するがんは、乳がんが1位ですが、死亡率を見ると大腸がんが1位。乳がんはもちろん、大腸がんにも気をつけなければならないのです。
「今は、ふたりにひとりが何らかのがんに罹り、三人にひとりが何らかのがんで亡くなっています。日本人のおよそ半分が、人生の中でがんに罹ると言えます。その中で、女性のがんの死亡率トップが大腸がんであることは、意外に知られていないかもしれません」と、大腸がんの研究に携わる、国立がん研究センターの松田尚久先生。
10年以上の経過でポリープががん化。
がんは特別な病気ではなく、生活習慣病のひとつであるとも言われています。特に大腸がんはライフスタイルが大きく影響。食事と運動に深く関係していると考えられています。
「かねてから言われているのが、ライフスタイルの欧米化。偏った食事や運動不足が大腸がんにつながっているようです」と松田先生。また、がん予防や評価に対する研究を専門とする同センターの笹月 静先生も、「大腸は、食べたものの直接のコンタクトがある部位。ほかのがんに比べて、より食事の影響を受けやすいのです」と話します。
偏った食事と運動不足。無関係だと言える人は多くないはずです。
大腸がんをはじめ、がんが年々増加している背景には、そうした生活習慣がまずひとつ。そして高齢化も原因のひとつに挙げられます。
「20~40代の方が罹る場合もゼロではありませんが、がんは高齢になれば罹りやすくなるもの。高齢化が進むことでがんも増加していきます」(松田先生)
免疫力の低下もあり、高齢者はがんに罹りやすくなります。が、その年齢になってすぐに発症するというわけではないそうです。
「大腸にできる腺腫性ポリープが、大きくなることでがん化すると考えられていて、その大きさに達するまで、一般的に10年以上かかると言われています。ですから、30代、40代の若いうちに予防意識を高めておくことが、大腸がんの予防につながるはずです」(松田先生)
将来、がんに罹って悲しい思いをしないためにも、健康な今のうちから、がんに罹らない習慣を持つことが大切なのです