認知症になりたくない!変化に気付いて未来を変えていく!
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認知症になりたくない!変化に気付いて未来を変えていく!
早期発見すれば、認知症が治療できる!
認知症を取り巻く状況で、発症する“前段階”で発見することによって認知機能を維持・回復する方法が今、注目されています。この前段階が「軽度認知障害(MCI)」です。
「認知症になると脳が萎縮していくことは以前から判明していたのですが、さらに研究が進む中で、実はもっと前から脳に変化が起こることもわかりました。軽度認知障害と呼ぶこの段階は、認知症ではなくその一歩手前の予備軍です。記憶障害はありますが、認知機能に問題はないし、日常生活にも支障がありません。しかし、放置していると認知機能が少しずつ低下し、認知症へ進行していく場合が多く見られます」
健康な状態と認知症との間が軽度認知障害ということですが、驚いたのは、軽度認知障害を早く発見できれば適切な治療で進行を遅らせることができるだけでなく、認知症の発症を防げる可能性もあるということ。 「軽度認知障害の存在がわかったことで早期発見ができるようになったのは、本当にすごいことです。現在では、専門の病院で詳しく診察すれば軽度認知障害がちゃんとわかるようになりました。だからこそ適切な治療がすぐに始められますし、そこから認知機能の維持・回復も考えることができるのです」
つまり早期に軽度認知障害を発見し、対処することが、認知症の最良の治療法なのです!
変化に気付いたら受診。これが早期発見の基本。
「治療によって認知症の進行を遅らせるだけでなく、発症そのものを遅らせることができれば、より長く健康に暮らせる時間が増えますよ」と朝田先生は言います。
軽度認知障害の治療を早く始めるためには、日常の変化に自分で気が付くことが不可欠です。そのために私たちが知っておくべきポイントは何でしょう?
「認知症は加齢によるもの忘れとの区別が難しいからこそ、生活の中にある“兆し”を知っておくことが大切です。注意散漫になった、同時にふたつの用事ができなくなった、料理の味付けがおかしくなった、という変化があればちょっと注意。“長年続けていた趣味をやめた”ということなら、これはもうレッドゾーンに近いと思います。好きだったことなのに急に興味がなくなるのは、軽度認知障害の可能性があります」
早期発見のためには、まず自分の行動を振り返って見ること。そこで「あれっ?」と感じたら、ためらわずに病院へ行きましょう。それこそが、早期発見の秘訣なのです。 「どこの病院へ行けばいいかわからないときは、暮らしている地域の“もの忘れ外来”を探してください」 「もの忘れ外来」とは、簡単に言うともの忘れの原因が加齢か病気なのか診断してくれるところ。ここで認知症の対策ができます。
「もの忘れ外来」で詳しく診断してもらい、認知症をまだ“予備軍”の段階で見つけること。自分の未来を変えていくためには、今この行動が何よりも必要だと言えます。
もの忘れ外来ってどんなところ?
詳しく診断、病気なら治療。専門機関の紹介もしてくれます。
認知症の早期発見、治療を目指した専門外来です。認知症の専門医が診察してくれるので、もの忘れの原因がわかると同時に、対策もできます。
認知症の対策は早期発見へ!
メタボリックシンドローム予防のための健康診断と同じように、国全体で今、認知症対策が動いています。それだけ認知症患者が増加し、社会問題になっているということで、早期発見し、適切な医療やケアにつなげるため、2012年に厚生労働省が「認知症施策推進5か年計画(オレンジプラン)」を発表しました。
この計画は、早期発見による治療で、認知症患者が住み慣れた土地で暮らし続けることを目指しています。そのために、全国各地に認知症の早期診断などを行う専門医療機関を約500か所配置するなど、早期発見のための施策や地域での支援の強化、若年性認知症への対策など、7つの重点施策が策定されました。
また、計画における認知症対策は「予防・早期発見とケア」を重視しています。居住地域に認知症の専門医療機関ができると、自分の行動の変化に気付いた際に、できるだけ早く受診しようという気持ちも生まれます。また、認知症予防の運動プログラムを作成、住民を集めて定期的に実施する地域も増えているようです。
社会全体が認知症の予防や早期発見、ケアに動き出すことで認知症への理解が広がり、予防の高まりにもつながりそうです。