世界の研究で判明!ごきげん×心と身体のメカニズム
読了時間:18分
世界の研究で判明!ごきげん×心と身体のメカニズム
ごきげんと健康、そして長寿の関係が、世界中で発表されています。ごきげんが心と身体に作用する、その仕組みを紹介しましょう!
ごきげんと幸福の関係は世界中で研究されている!
ごきげんは心と身体にどう作用するのでしょうか。それは、心のポジティブな側面を扱う学問「ポジティブ心理学」でもさまざまな研究が行われています。2011年には、権威ある科学雑誌『Science』が、Happy People Live Longer (幸せな人は長生きする)を、掲載しています。ここでは、坪田先生にうかがった、ごきげんと健康、ごきげんがもたらす数々の幸福との関係についての研究を紹介しましょう。
ポジティブな考え方なら健康で、長生きの可能性大。
ごきげんと長寿の関係についてわかるのが、修道女の手記を元にした、ケンタッキー大学のデボラ・ダナー教授の研究。経済的・社会的にも同じ階級、同じものを食べ、同じ医療機関を利用する修道女180人の手記から、〝寂しい″〝悲しい″〝辛い″などネガティブな言葉を多く使う人と、〝楽しい″〝嬉しい″〝幸せ″などポジティブな言葉を多く使う人をグループに分け、その後のグループの状態を追跡調査するというもの。修道女全員が80歳以上になった約60年後の生存率は、ネガティブな言葉を多く使ったグループが約34%、ポジティブな言葉を使ったグループは、なんと約90%! しかも健康状態もとても良好だったそうです(右にグラフあり)。同じ生活でも、ポジティブかネガティブかという考え方の違いで、健康や寿命にも差が出るということがわかったのです。
また、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのステップトー教授が、幸福な人とそうでない人のコルチゾール(ストレスを受けたときに分泌されるホルモン)濃度は、最大で32%もの差があったと発表しています。幸せな人ほど、コルチゾールのレベルが低く、高血圧や高血糖になりにくい上、感染症にもかかりにくく、脳や身体の老化もしにくいとか。しかも、心臓病や動脈硬化など、心血管疾患のリスクが低いことも明らかになりました。ごきげんな人は健康で長生きできることがうかがえます。
いい友人、明るい未来。ごきげんは広がっていく。
人間関係研究の権威である、ノースカロライナ大学の心理学者バーバラ・フレドリクソン教授をはじめ、多くの心理学者や経済学者が「幸せは伝染する」と結論づけています。社会学者のニコラス・クリスタキスと政治学者のジェイムズ・ファウラーによる研究では、最初の幸せな人から数えて最大で3人目(友達の友達の友達)まで幸せが伝播することがわかったそうです。それは、幸せな人の周りには自然に幸せな人が集まり、幸せな仲間のネットワークができるということ。そこから、ごきげんな人は人間関係に恵まれると考えられます。
左の図を見てください。上にある3つの四角形で形成された形は、AとBのどちらに似ていると思いますか? これは先述の心理学者フレドリクソン教授の「ポジティブな感情は、視野を広くして想像力を高める」という理論を実証する図。ポジティブな考え方をする人はAを選ぶ傾向が強いのだそう。四角形というパーツを見るのではなく、パーツをつないで完成する形を見ているからだとか。視野を広く持てるということは、例えば、収入が減ってしまっても、ただ節約するのではなく、収入を増やす方法も考えられるということ。目的を達成するために、アイデアを生み出すこともできます。ごきげんな人は、だから明るい未来を築ける、と言えます。
ごきげんな考え方で運動効率も上がる!?
ハーバード大学のランガー博士の研究もとても興味深いもの。4つのホテルの従業員に「この仕事は30分以上の運動に相当し、健康にいいものです」と伝え、何も伝えなかった3つのホテルの従業員と比較実験を行いました。
1か月後、「健康にいい」と聞いていた4つのホテルの従業員だけが体重、体脂肪、血圧ともに低下。健康にいいと思っているかどうかで、同じ仕事でも運動効果が異なることがわかりました。いつもの仕事や家事も「いい運動になる」と考えれば、ダイエットにもつながるかもしれません。
ごきげんな人の子どもはごきげんに育つ。
赤ん坊のときのスキンシップがいかに大事かということが、マウスを使った実験で明らかになってきました。実験の内容はこう。まず、世話好きな母親マウスと、無関心な母親マウスに分け、別の母親マウスから生まれた子どもを育てさせます。そして、成長した子どもをプールに落としたところ、無関心マウスに育てられた子どもはパニックになって溺れたのに対し、世話好きなマウスに育てられた子どもは、慌てることなく泳ぎ助かります。その後、溺れた子どもは臆病に育ち、母親になっても無関心に、助かった子どもは勇敢に育ち、世話好きな母親になったのだとか。赤ちゃんにスキンシップが大事なのは、心を安定させるだけでなく、ポジティブで、勇敢、そして愛情あふれる大人に成長させるためだと言えます。
この実験でもうひとつわかることは、性格や性質の形成は、遺伝子よりも、環境が影響するということ。ごきげんも、生まれ持ったものだけでなく、環境によって変わると言えます。
-
遺伝子レベルの研究で、幸せは2種類あるということが明らかになりました。ひとつは食事やレジャーなどで感じる快楽的な幸せ「ヘドニックハッピネス」。もうひとつは、社会貢献など献身的な行いで感じる幸せ「ユードモニックハッピネス」。自分が楽しむことだけでなく、他者に尽くすことでも人は幸せを感じているのです。また、それぞれの幸せで、"身体を守るための遺伝子"の出現が異なることもわかってきました。前者は炎症を抑える遺伝子、後者は免疫力を上げる遺伝子が出現するそう。今後それをもとに、幸せに関するさまざまな研究が進められるはずです!
-
涙の量や質が変化して、目の表面が傷ついてしまうドライアイ。副交感神経が優位なリラックス状態であれば涙が分泌されやすいのですが、ストレスなどで交感神経が優位になると涙が十分に分泌されず、乾きやすくなってしまいます。ストレスに強いごきげんな人は、ドライアイになりにくいと言えます。