“年齢とともに低下する”と信じられていた、記憶力に意外な事実! 記憶力の低下は、実は加齢のせいではなかったのです。最新の脳科学からわかった、記憶力の真実をお伝えします!
脳は、100年経ってもほとんど衰えないタフな臓器。
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脳は、100年経ってもほとんど衰えないタフな臓器。
「トシだから忘れる」は大人の先入観。
人の名前を思い出せなかったり、何をしようとしていたのか忘れてしまったり。そんな経験は誰にでもあるものですが、それを「トシのせい」で片づけていませんか? 実は「年齢を重ねても、記憶力は低下しない」ことが、最新の研究でわかってきました。その、気になる“記憶力の真実”を、脳研究を専門とする東京大学の池谷裕二先生にうかがいました。
「オランダの115歳で亡くなった女性の脳を解剖したところ、脳の機能がほとんど老化していないことがわかったのです。この実験結果から、脳の寿命(※)は120年くらいだろうと考えられるようになりました。例えば、脳梗塞は脳神経細胞の病気だと思われがちですが、血管が衰えることによって起こる病気。脳自体はとてもタフなんですよ。
大人は、記憶力が低下したことをとても気にしますが、実際のところ、度忘れの回数(※)は大人も子どもも変わらないんです。大人はそれを『老化の象徴』と捉えることで深刻になってしまうんですが、子どもは思い出せなくても、特に気にはしていない。それだけの違いなんです」
子どもと大人では感覚や環境が違う。
時間感覚の違いも、記憶力が落ちたと思う原因のひとつなのだとか。
「使わなかった情報は、大人も子どもも半年もすれば忘れてしまいます。ただ、子どもにとって大昔である“半年前”は、大人にとって“最近”だったりしますよね。だから、大人はそんな“最近”のことを思い出せないのがショックなんです」
それでもやはり、子どもの頃に比べたら、人の名前が思い出しにくくなっている……と思った人も多いはず。名前が思い出せないのは、大人は子どもと比べて、知人の数が圧倒的に多いため。たくさんの引き出しからひとつの名前を取り出すには時間がかかります。知人が少ない子どもは、少ない引き出しから簡単にひとつを取り出すことができ、また、何度も出し入れするので、記憶を定着させる復習効果も高いのです。
「帰国子女が好例ですが、日本に戻って日常的に英語を使わなければ、小学生であれば半年ほどで忘れてしまいます。むしろ、きちんと英語を学習した大人の方が忘れないくらいです」
記憶を定着させる復習の必要性は、大人でも子どもでも同じなのです。大人がもの事を覚えられない一因として、学生の時ほど何度も繰り返して覚える努力をしなくなることも挙げられますね。
生命維持に必要なら海馬は情報を記憶。
記憶に大切なのは、興味を持って覚えることだと、池谷先生は言います。
「記憶を司る脳の海馬(※)には、必要な情報を取捨選択してふるいにかける機能があります。海馬が『この情報は必要』と判断する基準は、生命維持に必要かどうか、これだけ。動物は『ここで死ぬ思いをした』、『こうしたらエサが獲れた』など生命維持に必要なことから覚えていきます。そういうときは集中しているし、対象に興味が向かって感情が動いているでしょう? もの事を覚えるためには興味を持ってワクワクするなど、感情を伴わせることが必要なのです」
確かに韓流スターの名前など、好きなこと、興味のあることなら、難しくてもすぐに覚えられますよね。反対に、毎日がマンネリで新鮮味がないと、興味がない→覚えられない→記憶力が落ちた→老けたと感じるようになるのです。