白髪は年齢を重ねるとできる、自然な現象。ここ数年で、隠さず見せる〝グレイヘア〟も注目されています。でも、できれば白髪がないほうがいいな……、という気持ちも、あるのではないでしょうか?実は今、白髪を黒髪に戻すための研究が進んでいます。もしかしたら、白髪に悩まない未来が来るかも?と期待されているのです。白髪について、今わかっていること、白髪対策に役立ちそうなことを、お伝えします!
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今わかっている、白髪のこと。
黒髪、金髪、赤毛。髪の色は何で決まる!?
あなたは、どれくらいのペースでヘアサロンに行っていますか? 筆者は、カットとカラーで1か月半ごと。かつては2か月ごとでしたが、それより早く白髪が目立つようになったからです。染めるなど、隠す方法はあるものの、白髪は髪の悩みの中でも上位にあるのだそうです。そんな悩ましい白髪を、黒髪に戻せるとしたら? 実は今、そんな研究が進んでいるのです。とり組んでいるのは、岐阜大学の青木仁美先生。
「白い肌になりたいという人が色白になったり、白髪をなくしたい人が黒髪になったりできないか? 【色素細胞】をコントロールすることで、それらの実現を目指し研究を続けています。 色素細胞とは、生物の身体の色や模様を決定するもの。ヒトの毛髪や皮膚の色を司り、メラニンという、黒褐色、黄赤色の色素を作るのが代表的な役割です」
私たちの髪の色は多くが黒ですが、海外では金髪や赤毛の人もいます。それは色素細胞で作られるメラニン色素の種類と分量によって決まるそうです。
「黒褐色のメラニンが多ければ黒髪に、黄赤色のメラニンが多ければ金髪や赤毛になる傾向です。皮膚の色の違いも同じく、メラニンの種類と分量の違いです」
なぜ、人種によって色に違いがあるのでしょうか?
「それは、紫外線の関係だと言われています。緯度の低い赤道付近に暮らす人種は、皮膚と同様、強い紫外線から身体を守るため毛髪が黒くなります。一方で緯度の高い土地は、紫外線が多くありませんから、そこに暮らす人種は黒褐色のメラニンが少なく、皮膚も毛髪も薄い色になります。暮らす場所によってメラニン色素の種類、分量が変わるということ。人類はアフリカで誕生し、そこから十数万年かけて地球上に拡散していったと考えられています。色素細胞の変化は、その環境で生き延びるための進化だと言えます」
色素細胞がなくなると起こることとは。
色素細胞は、紫外線から身体を守る役割に加え、有害な物質を体外に排出するという役割もあるそうです。
「 メラニンを作る色素細胞がないと、毛髪に色をつけることができません。それが白髪の原因。 加えて身体の中に悪いものが溜まっていく、と言えます。私たちは、魚介などの食品から水銀などの重金属を身体にとり込んでしまっています。有害な物質ですから、身体の外へ出さなければならないのですが、便や尿の中には排出できません。排出できるのは爪、そして毛髪なのです。メラニンが重金属などの有害物質に結合し、毛髪の中に排出しています。色素細胞が黒褐色、黄赤色メラニンを作れなくなると、有害物質と結合することができなくなってしまうのです。白髪が増えるのは、身体の排出機能が低下しているサインだと言えます」
色素細胞は、色をつけるだけではなく、身体を守る働きもある。 それを知って、色素細胞を大切にし、そして黒髪を少しでも長く維持したい、と筆者は感じました。
黒髪と白髪、その仕組み。
色素細胞を作る重要な細胞がある!
毛髪の色は、メラニン色素の種類と分量で決まる。 ここまででそうお伝えしました。メラニン色素がなくなることで白髪になるわけですが、どうして色素がなくなってしまうのか、その仕組みを先生にお聞きしていきます。
「メラニン色素を作る色素細胞は、毛髪を作る毛母細胞とともに、毛乳頭に存在しています(下の図①を参照)。そこで毛母細胞が分裂する際に、色素細胞が作ったメラニンを受け渡しています。最初は色のついていなかったものがここで着色されて、黒褐色、あるいは黄赤色の毛髪が生えてくるのです」
色素細胞は、3~6年の毛髪サイクルが終わるまでに寿命を迎えます。ただ、それによってすぐに白髪になるわけではありません。
「また新たな色素細胞が、色素幹細胞から供給されるからです。幹細胞とは、自分自身と同じ細胞を複製する能力を持つ細胞のこと。色素幹細胞が分裂・分化して、新たな色素細胞を生み出しているのです。ただ、色素幹細胞にもやはり寿命があります。色素幹細胞自体が枯渇してしまうと、新たな色素細胞は供給されず、毛髪に色をつけられなくなります。 白髪の大きな原因は、まず、色素幹細胞の枯渇が挙げられます 」
環境に左右される色素幹細胞の働き。
色素幹細胞の枯渇だけでなく、働きが悪くなることも、白髪になる原因です。
「色素幹細胞が存在している、その環境の良し悪しも関係します。かつては、色素幹細胞そのものが何らかの刺激を受けることでその機能を失うと考えられていましたが、私が行った実験では、 色素幹細胞を守る環境がダメージを受けることも原因 だとわかりました。そのダメージによって、色素幹細胞が色素細胞を生み出せなくなるのです。色素幹細胞は、毛乳頭の上にあるバルジという場所に存在します。ここに、色素幹細胞を支える環境があります(下の図②を参照)。栄養のない土に種をまいても芽が出にくくなるように、環境が悪ければ、色素幹細胞の機能も悪くなると言えます」
実は、 機能が悪くなった場合でも、また状態を改善させることが可能 なのだそうです。
「枯渇すると黒髪には戻せませんが、色素幹細胞が残っているなら、また戻せる可能性があります。ケガや病気などで損なわれた身体の機能を元に戻す再生医療では、幹細胞を投与する方法が主流になっています。白髪を改善するために色素幹細胞投与も考えられますが、現状、毛髪ではまだ上手くコントロールできません。ですから、色素幹細胞を支える環境を守ることで、黒髪に戻す方法を確立したいと考えています」
今、さまざまな研究で、白髪改善に役立つものがわかってきているそう。白髪を黒髪に戻せる未来はそう遠くないかもしれません。
健康作りが白髪対策に!?薬はない。だからセルフケアを。
白髪を抜くのはやはりNG。
今はまだ、白髪を黒髪に戻す方法は確立されていませんが、白髪の発生を遅らせると考えられる方法はいくつかあるそうです。
「 色素幹細胞と、それを支える環境を守ること。それが、白髪を増やさないための対策です。やめるべきこととして挙げられるのは、白髪を抜くこと。 抜くと増えるという話を聞いたことがあるかもしれませんが、そうではありません。色素幹細胞の寿命を縮めないためです。髪を抜くと、次の髪を生やすために毛包細胞、色素細胞が消費されます。それに伴い、色素幹細胞が新しい色素細胞を生み出そうと分裂するため、寿命が短くなるのです。白髪の増加を早めることになるので、気になっても抜かないようにしましょう」
では、やるとよいことは何が挙げられるのでしょうか?
「 白髪は細胞の老化ですから、老化予防になることは白髪予防にもなる と言えます。酸化ストレスは、細胞や遺伝子を損傷し、老化を招く原因。身体を酸化させないために、紫外線を防ぐ、禁煙すること。食事などからビタミンCや、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化成分を摂取するのもひとつの方法です。また、育毛剤もよいようです。育毛剤には抗酸化成分や血行を促す成分が含まれていますし、頭皮環境が整うことで白髪予防につながると言えます」
白髪予防は、健康作りにも!
血行をよくすることも、白髪予防のひとつ だそうです。
「血流が悪いと、色素細胞に十分な栄養を届けられなくなります。血流をよくするために、栄養バランスのとれた食生活、適度な運動、適切な水分補給を心がけて。頭皮のマッサージをとり入れるのもよいでしょう」
白髪の原因は人によってさまざまなので、ここで紹介した方法は誰にでも効果があるとは言えないそうですが、そのほとんどは、健康作りにも役立つもの。黒髪に戻せなくても、白髪が増えるスピードがゆるめられるかもしれない、と考えて、筆者は先生から聞いた方法をとり入れていこうと思います。
「白髪は病気ではないので、効果のある薬はありません。ただ、老化が病気だと考えられるようになると、予防医学が扱う分野として白髪も含められるかもしれません。そうなると白髪の研究はさらに進んでいくはずです」
薬がないからこそ、今はセルフケアが大事。 白髪に悩まない未来が待っている。ちょっとワクワクした気持ちで、髪と身体、心の健康のためにケアを続けましょう。
健康な髪と身体のために!
白髪を抜くと、色素細胞を作る色素幹細胞の寿命が縮まります。白髪の増加が早まることになるので、抜かないで。白髪かくしなど便利なアイテムもあります。
酸化ストレスは、細胞や遺伝子を損傷し毛髪の老化を早めます。紫外線を防ぐ、喫煙をやめる、食事などから抗酸化成分を摂るなどして、酸化を防ぎましょう。
〈主な抗酸化成分〉
●ビタミンC ●ビタミンE ●ポリフェノール ●カロテノイド(βーカロテン、
リコピン、ルテインなど) ●アスタキサンチン ●ミネラル類
血行が悪いと、色素細胞に十分な栄養を届けられなくなり、白髪の増加につながります。栄養バランスのとれた食事、適度な運動、適切な水分補給を心がけて。
















