誤解3:難聴は、音が聞こえないだけ。
⇒『言葉の理解もしづらくなります』
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誤解3:難聴は、音が聞こえないだけ。
⇒『言葉の理解もしづらくなります』
音が聞こえにくい上、言葉がわかりにくくなる。
年齢を重ねることで起こる加齢性難聴。家族や親せきなど身近な人に、それで聞こえが悪くなっている人がいるかもしれません。大きな音量でテレビを見ていたり、話を聞き返すことが多かったりするのは、「音が聞こえていないから」と思われるかもしれませんが、それだけではないようです。
「テレビを大音量で見るのは、音が聞こえにくいことももちろんありますが、それに加えて“言葉を理解しにくくなっている”可能性もあります」
加齢性難聴は、有毛細胞だけではなく聴神経や脳の機能とも関係。それが、言葉を理解する力の低下につながっています。
「音や加齢、病気などで有毛細胞が減ったり壊れたりする上に、集めた音を脳に送る、ケーブルともいうべき聴神経の数が減ることも原因です。聴神経が減ると、脳に届けられる情報量が減ります。脳もまた加齢によって機能が低下しますから、音の情報量が減ることで、さらに言葉を理解するために時間がかかってしまうのです」
難聴のある高齢者に話しかけるとき、聞き返されることが多いのは、言葉の理解に時間がかかることも原因のひとつです
「子音が聞き取りにくいことも、言葉を理解しにくい要因です。先ほどご説明したように、蝸牛の入口付近にある有毛細胞から壊れていくため、高音域から聞こえにくくなります。母音である【あ・い・う・え・お】は低音域ですから、まだ聞き取れる。しかし、高音域の子音は聞き取りにくく、子音から始まる言葉はわかりにくくなります。例えば【しろい(白い)】と【ひろい(広い)】、【さかな(魚)】と【たかな(高菜)】などで間違えが多くなります。賑やかな場所ではさらに言葉の聞き取りが悪くなりますから、飲食店での食事会には参加しにくい、という人もいます」
難聴によって、社会的孤立の心配も。
「難聴は、聞こえにくくなって、生活がちょっと大変になる」レベルではありません。認知症とも関係があることがわかっています。
「中年期以降の難聴は、認知症の最大のリスク(下のグラフを参照)。難聴は、単に聞こえにくさに困るだけではありません。認知症ももちろんですが、難聴があると、周囲とのコミュニケーションがとりにくくなるため、意欲低下や、社会的孤立につながると指摘されています。加齢性難聴は、社会的に対策すべき疾患なのです」
外出しよう、友人と会おうという気持ちが低下することで、フレイル(心身が衰えた状態)につながるとも言われています。
「有毛細胞や聴神経は再生することはありませんから、加齢性難聴を治すことはできません。ただ、予防することは可能だと言えます」
「まだ、大丈夫」。だから気にしないのではなく、「まだ、大丈夫」な今だからこそ、加齢性難聴にならないよう、できることを始めましょう。