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知っトク!?健康スキル

『昆布だし』+『かつおだし』でうま味が7倍に!肥満予防にも効果が(2/3)

掲載号 vol.32

『だし』を使う食生活が健康作りに!うま味が病気予防に

おいしいものがない。そこから生まれただし。

だしはアミノ酸が含まれることから、“美と健康にいい”と言われることがあります。が、先生はそう考えていないのだそう。

「だしの成分に、美容や健康と直接つながる機能があるとは思いません。それよりも、だしを使う食生活に、“いいこと”がある。そう考えています」

先生のその言葉の意味を理解するには、だしの歴史を知る必要があるようです。

「料亭の料理だけでなく、家庭の食卓に並ぶ和食にもだしが使われています。なぜ日本でだしを大切にする料理文化ができたのか? それはかつての日本には、だし以外においしいものがなかったからです。日本には長らく砂糖と油脂がありませんでした。砂糖は国内にわずかしかなく、庶民には高級品。油脂や肉は、仏教の影響で奈良時代から摂取が禁じられていました。明治時代に至るまで、食べるのを許されたのは魚や鶏肉くらいです。そのように抑制された食の歴史の中で、満足感を与えてくれたのが、だしのうま味と塩の味わいだったのです」

だしはいわば、何もないところから生まれた、おいしく食べる知恵だったのです。

和食

砂糖や油脂に対抗できるおいしさの快楽。

そうした食生活は1960〜1975年頃に劇的に変化。炭水化物の摂取が減って、脂質の摂取が急激に増加しました。

「私は1953年生まれで、子どものころはやはり洋食をおいしいと感じました。和食には地味な印象があり、インパクトのある海外の食に、誰もが憧れたように思います。砂糖も肉もおいしく、やめられなくなる人が増えた。その結果、肥満が増加したのです。私が大学を卒業したとき(1975年)には、肥満をはじめとする生活習慣病がこれほどまで増えるとは、想像もできませんでしたよ」

1960年にはわずか20万人ほどだった糖尿病は、2014年には316万6000人にまで増加しています。健康に大きく影響する食。よい食生活を心がける人は増えていますが、砂糖や油脂など“おいしいもの”をなかなかやめられない、という人も少なくありません。

「誰にでも、食べる楽しみを満足させたい欲求はあります。『砂糖や油脂を控えなさい』と言われても、簡単にはできないでしょう。ガマンの食生活には幸せが足りません。だからこそ、だしの出番。うま味の効いただしは、砂糖や油脂に対抗できる、“おいしさの快楽”をもたらしてくれるのです」

「あぁ、食べたい」“帰る場所”になるだし。

甘いお菓子やこってりした料理がやみつきになっている人でも、だしの力でその嗜好を変えることができるのだそうです。

「最初は物足りないかもしれませんが、だしの効いた料理を食べるうちに今度はそちらがやみつきになるのです。東北大学文学研究科の坂井信之博士の2009年の研究で、最初は嫌いであったものでも繰り返すと好きになることがわかりました。被験者に苦手な飲料を5日間摂取させると、その後、苦手からおいしいという評価に変化。その上、3週間後に同じ飲料を摂取させると、おいしいとの評価がさらに上昇しました。摂り続ければその味を好むようになるのです」

海外旅行などでしばらく和食を食べられなくなると、「あぁ、食べたい」と恋しくなるものです。本特集の冒頭でご紹介した、編集部メンバーの家族も同じ気持ちだったのでしょう。

「若い人の和食離れが進んでいると言われますが、子どものうちからだしの味に触れさせておくのも食育のひとつ。だしのおいしさを教えることは、大人になってからの“帰る場所”を教えることにもなると思います」

ガマンではなく、おいしさで健康を目指せる。それがだしのある生活の“いいこと”なのです。

唾液分泌をより促すのは酸味よりもうま味だった! column唾液分泌をより促すのは酸味よりもうま味だった! column

唾液の分泌が悪くなるなどで起こるドライマウス。乾燥するだけでなく味覚障害などのトラブルを引き起こす病気です。年齢を重ねると唾液の分泌が減るため罹りやすくなりますが、だしにあるうま味が予防につながるとの報告がありました。東北大学の笹野高嗣教授による研究で、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味の基本五味の中で、うま味が最も唾液の分泌量を多くすることがわかったのです。下のグラフを見ると、始めは酸味での分泌量が上回りますが、うま味は、最も長く、多く分泌されています。だしは生活習慣病予防に役立つ上に、口内環境を整え、口から始まる病気も防いでくれると言えます。

参考文献:Important Role of Umami Taste Sensitivity in Oral and Overall Health.
Sasano T, Satoh-Kuriwada S, Shoji N, Iikubo M, Kawai M, Uneyama H, Sakamoto M.
Current Pharmaceutical Design. 20. 2750-2754, 2014.

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